去年(2020年)10月、それまで働いていたIT系の派遣先が過重労働で、逃げるように今の工場派遣先に転職しました。
コロナ禍でEの地元の派遣社員の求人は減り選択肢が限られ、当時最善の派遣先ではあったものの収入減を余儀なくされました。
なにしろ今の派遣先は居心地が最高クラス。
極力派遣先を替えることなく収入アップを目指し、契約更新の度に派遣会社に賃上げ交渉。
派遣先の有名上場企業からは契約社員にならないかという話をちらつかされる。
時給と契約社員問題で毎回揺れる派遣契約更新。
動きがなければいよいよ派遣先変更しかないのか、と思っていた矢先、派遣社員生活初の時給アップとなりました。
今回、この件について報告します。
前回の記事です。
時給アップ交渉
上場企業の工場で派遣社員として働くEが、同じ職場の同じ派遣会社で自分より時給の高い派遣社員、製造現場で4勤2休昼夜二交代で働く派遣社員より時給が安いことを知ってから早二か月。
というのもEの派遣労働契約が二か月毎なんですが、この二か月の出来事がこれです。
時給アップ交渉の前提
前提として、こういった経緯があります。
①大前提:今の派遣先は仕事内容、仕事量、職場環境ともに順調満帆、居心地最高。しかも派遣会社を換えると有給休暇の付与日数がリセットされることもあり、今の派遣先と派遣会社は極力換えたくない。
②派遣会社:2月末にEより時給が高い派遣社員がいることを知り、さっそく派遣会社に連絡。
時給が違う理由は、4勤2休の二交代制で働いているから。
要するに、応募が少ないから高時給、であって個人のスキルやパフォーマンスとは無縁の理由。
③派遣先工場:勤務開始二か月経過の昨年末(2020年)から所属するセクションのリーダー(派遣社員の人事権を持っていると思われる)に契約社員に転換する話をちらつかされる。
現派遣先と派遣会社間では既に複数の転換実績あり。
と、ここまでは前回記事でも紹介しました。
では、その後何が起こったのか。
過去のtwitter投稿です。
ここ2か月の動き
あれからこのような動きがありました。
①とりあえず派遣労働契約を継続。
派遣会社には時給アップ交渉、派遣先工場からの契約社員転換オファー待ち、双方を同時進行。
では、派遣先工場は、
②派遣先リーダーが言っていた「(Eの契約社員転換を)4月からの予算に入れた」という4月に入る。「予算」というのは派遣会社から派遣会社を「買い取る」ためのものと思われる。
仕事上でリーダーと話す機会があり、ついでに「あの話どうなりました?」と聞いてみる。
すると「逆にEさんはどう思っているんですか?」と聞かれ「お話があれば受けようと思っています」と。
もちろんオファーの条件次第では断ることもあり。とりあえずオファーがないと比較もできない。
「このまま派遣として同じ条件では次の契約はできない」とプレッシャーも与えておく。
リーダーも「それじゃこの話、進めます」と。
ところが5月下旬の今日に至るまで動きなし。
いよいよ、契約社員にするする詐欺の疑惑が濃厚。Eを他の派遣社員より低い今の時給でできるだけ長く引っ張ろうとしているとしか思えない。
というわけで、この話は期待度50%から10%未満に激下がり。
もう、派遣先はあてになりません。
時給アップを実現するしかありません
③派遣会社も音沙汰なし。
現在の派遣労働契約の終了一か月前、GW直前に派遣会社の担当者に電話(普段やり取りは証拠が残るようにできるだけメールでするようにしているが)。
時給アップを強硬に要求する。
時給アップ要求の理由として、
・Eは所属するセクション唯一の派遣社員で、当初想定されていた職務範囲をはるかに超えた業務を質、量ともにこなしている。
・業務上、工作機械や測定機器、PCなどについて一般の工場派遣社員にはないスキルを多用している。
・同一労働同一賃金の考え方からして、4勤2休二交代制を理由に時給が低いのはおかしい
これらを材料に派遣先に時給アップ交渉をするように要求。
Eの時給が上がれば当然派遣会社の取り分も増えるはず。
さて、その後は。
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交渉成立!
GWが明け、派遣会社からは連絡なし。
翌週の5月中旬、現契約も終了まで半月。Eはメールで担当者に「何か動きはありましたか?」と。
それでも連絡なし。
1週間ほどしてもう一度「その後どうでしょうか?」と催促。
その日のうちに返事あり。
「50円アップで先方(派遣先)からOKをもらいました」と!
5年目に入った派遣社員生活で初の時給アップを実現しました~
とはいえ、たったの50円。
月170時間働いたとして8,500円アップ、だけ。
製造現場の派遣社員とはまだまだ開きがあります。
まあ、現実的に考えていきなり大幅なアップはないというのはわかります。
Eを納得させるために、最低限の上昇幅50円ということでしょう。
とりあえずは、製造現場の派遣社員の時給を目標に、粘り強く交渉を続けていきます。
ところで、Eは今後の交渉材料として考えているある手段があります。
同一賃金同一賃金の考え方
昨年(2020年)4月から大企業で始まり、今年4月1日から中小企業でも適用となった『同一賃金同一労働』という制度があります。
始まったばかりで罰則もない制度ですが、簡単に言うと「正規か非正規かという雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇による同一労働同一賃金を実現する」というものです。
この制度はよく勘違いされている「派遣社員も正社員と同じ仕事をしなければならない」といったものでは決してありません。
Eの職場でもそうですが、派遣社員や契約社員などの非正規労働者と正社員ではほとんどの会社で職務内容は違うことでしょう。
賃金などの待遇が違うのも当然です。
この「同一労働同一賃金」の制度は、職務内容や範囲などによって異なる待遇差が「合理的」であるべきだ、というのが基本的な考え方です。
では、具体的には?
この制度の具体的な運用は、厚生労働省のガイドラインが判断の基準となっています。
Eの職場での待遇差は?
同一労働同一賃金の制度の考え方からすると、Eの派遣会社内での待遇差はどうなんでしょうか。製造現場の派遣社員との賃金差は『合理的』なのか『不合理』なのか。
元社会保険労務士でもあるEの分析です。
現派遣先の上場企業の工場で働くEの派遣会社の2つの異なるセクションの派遣社員、
・製造現場の時給が高い派遣社員(多数)
・主に、製造器具の保守管理、作成をする部門の時給が低い派遣社員(E一人だけの特例)
この両者の待遇、時給は100%派遣先の上場企業の意向で決定していると思われます。
もちろん最終的にEの雇い主である派遣会社がEの時給を決めるわけですが、派遣先が労働法や制度など考慮せずに決めた、特例の派遣社員であるEの時給を追認したに過ぎません。
というのも、Eが前々派遣先の別の製造業の工場で働いていた時、Eの派遣先は昨年4月の同一労働同一賃金の制度のスタートに合わせて、完全に制度に基づいた賃金決定方式をもとにEの時給が決定されていたからです。
しかも時給決定に至る考え方もEに詳細に説明がありました。
Eの派遣会社の当時の慎重に法律に基づいた決め方と、今回の派遣先のテキトーな時給の決め方とは差がありすぎます。
ということは、派遣会社の意志ではないけど、顧客である派遣先上場企業の決定したEの賃金額を飲まざるを得なかった、という可能性もあります。
ここで「同一労働同一賃金」制度での派遣社員の賃金決定方式について、過去の記事でも詳しく語っていますが、もう一度簡単に解説します。
同一労働同一賃金についての過去の記事です。
同一労働同一賃金、「労使協定方式」とは
同一労働同一賃金の制度上、派遣労働者の賃金決定方式は二つあります。
「派遣先均衡・均等法式」と「労使協定方式」です。
Eの派遣会社は労働者代表を決めた上で「労使協定方式」を採用しています。
昨年4月の発足時も、今年4月の更新時も前派遣社員の投票によって派遣労働者の代表を決めて労使協定を締結します。Eもメールで顔も見たことのない他の派遣先の派遣社員の人に投票しました。
「労使協定方式」によって派遣社員の賃金を決定する場合、賃金額が「同種の業務に従事する一般労働者の賃金」と同等以上であることが要件となっています。
「同種の業務に従事する一般労働者の賃金」はある資料によって定められています。
その資料とは「賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)」というものです。
今年(令和3年度)は2年前の平成元年の資料が該当します。
➡「令和元年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)」はこちら
その一部がこれです。
引用元:令和元年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算 )
(局長通達別添1)厚生労働省
上の表の左が職種、『基準値(0年)』は入社時の賃金基準です。その後は勤続年数によって上昇します。また、ここにはありませんが都道府県によって「地域調整」を行い金額が決定します。
時給換算で実際の賃金が、該当の金額以上であれば問題ありません。
前々派遣先工場の時に受けたこのような説明を、今回は一切受けていません。
とはいえ、こうして見ると製造現場の時給とEの時給ともにこの基準額を超えているのであれば、この派遣社員間の待遇差は規定に反しているとは言えないことがわかります。
そして同一労働同一賃金の制度にはこのような規定があります。
非正規雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」など、自身の待遇について事業主に説明を求めることができる
ということです。そして、
待遇差の内容や理由について説明義務がある
となっています。
Eはこれを賃金交渉に利用しようかと思っています。
賃金交渉と同一労働同一賃金
Eが目標としている、Eより高い製造現場の派遣社員の時給額。
同一労働同一賃金の制度は、非正規労働者と正社員の待遇差を合理的なものにする、ことが主な目的となっています。
Eの時給と製造現場の時給の待遇差は、実のところ何とでも説明がつくと思っています。
説明したように、基準値以上の時給であれば問題ないわけで、高い方の製造現場の時給は4勤2休、二交代制という他の人がやりたがらない労働環境へのインセンティブということで充分説明がつくでしょう。
が、制度に則って正式にEの待遇についての説明を派遣会社に求めることで、派遣先にプレッシャーを与えることになります。
正社員との待遇差ということであれば、Eとほぼ同じ業務をやっていて辞めた前任者は正社員でした。
前任者の給料がどれくらいだったかはわかり様がありませんが、派遣先は派遣社員の均衡待遇のために、派遣料金に配慮する義務があります。
有名上場企業である派遣先は労働争議が起こったりしてコンプライアンス違反が疑われるようなインシデントを嫌うはずです。
Eの本気度も伝わるでしょうから、契約社員の話も動くかもしれません。
この方法は最適なタイミングで使う必要があります。
「Eがいないと回らない」と思われるように職場での存在価値をさらに高めることができれば、それがその時です。
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まとめ
と、交渉によってようやく最低限の50円の時給アップを実現したEがこの先さらなる譲歩を引き出せるかどうか。
なによりこういう交渉事、Eは嫌いじゃありません。
イチ派遣社員が(派遣会社を介して)上場企業を相手に時給交渉。強大な組織をわずかでも動かすことができるのかどうか、結構楽しめる方です。
なにしろ、会社や経営者といったものはEにとって長年の宿敵ですから。
今後もEの派遣先での様子をお伝えしていきます。
次回をお楽しみに!
フリーランスにも憧れますが、やっぱり派遣社員は楽です。