労働法

同一労働同一賃金 派遣社員Eの実情、待遇改善はあったのか?

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今回は派遣社員Eの4月1日からの新たな労使協定による労働条件の変更の内容の紹介と、現時点での同一労働同一賃金の制度が 非正規労働者の待遇に いかに効果薄だったか、裏にある企業側の意図は何かについて語ります。

過去の記事で、同一労働同一賃金の施行について次のようなことを語ってきました。

  • 4月1日の施行後の派遣労働者の賃金の決め方
  • 施行後も企業は極力待遇を上ないための対策を取るだろう
  • 企業は国の後押しで労働者側からコントロールを受けることはなんとしても退けようとすること
  • 世の中が待遇改善に動くのは労働者からの(特に有名企業の)声が必要

などなど。
では、派遣社員Eの待遇改善は実現したんでしょうか!

労使協定の説明を受けました

法改正の施行直前の3月27日に派遣会社に呼び出されて労使協定の重要事項説明を受け、新たな派遣労働契約書に押印してきました。

労使協定とは、今回の労働者派遣法の法改正で派遣会社がしなければならない労働者の待遇決定のために定められた二つの方法のうちのひとつの「労使協定方式」で、(もうひとつは「派遣先均衡・均等法式」)派遣会社と労働者代表で締結する派遣社員の待遇についての書面です。

派遣会社の僕の担当は40歳前後の男性で、素朴で誠実そうな印象の人でそこそこ信頼できる人物、と僕は評価しています。
派遣会社の担当さんとの関係っていろいろとサポートもしてくれるけど決定的に利益相反する部分もあるという微妙な部分がありますよね。

ちなみにEは担当の彼に自分は出勤率もいいし仕事ぶりも抜群で派遣先から高い評価を得ているから(と担当本人が言っていた) 何度か 時給を上げてくれ、と交渉したことがありますが、つまりそれは言外に派遣会社の取り分を減らして僕に回してく、と言っているわけですが常に「できません」と断言されています。

利益相反の最たるものがこの派遣社員の取り分の問題ですよね。

Eの労使協定内容 賃金

Eは『労使協定 重要事項説明書』と補足説明の別表が載ったA4の書面の2枚を受け取りました、その中のいくつかを紹介します。

まず一番気になる「賃金の決定方法」
こうあります、
「基本給及び賞与の比較対象となる「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」は職業安定業務統計の基準を満たした別表1の2のとおりとする。地域指数は〇〇県○.○%を用いる」
はい、意味わかりません。

要するに、先日の記事にも書いた派遣社員の待遇を決定する際に「労使協定方式」を採用した場合の規定にのっとっています。合法です。

よくわからない、という人は何度も紹介している厚労省のHPにある動画を見てください。『派遣労働者編』の方です。一発で理解できます。

文章の中の、「別表1の2」とはこうです。厚労省の資料をもとに派遣会社が作った表です。上記の厚労省の動画にも説明が出てきます。

派遣社員が受け取る時給が赤丸の額以上ならOK

地域指数は架空の数値です、がだいたいこんな数値です。派遣会社や派遣先にEのこのブログがばれると何かと記事を書きにくくなりますから。

しっかり正規の賃金の決定方法にのっとっていますね。Eの時給はこれよりはだいぶ上で、「1年」と「2年」の間です。
ひとつだけEが気になるのは基準とされた金額が能力・経験0年の額だったことです。
僕は既に同じ派遣先で3年働いていますし、作業量・スピードも部署内でトップクラスなんで「評価が0年?」と引っかかっています。同一労働同一賃金の改正で会社は労働者からの賃金等に関する問い合わせに回答しなければならない、とあります。
Eはこれについて書面で派遣会社に質問しようかとも考えています。
が、しないかもしれません。なぜなら、来月以降に時給がいい別の派遣先に移らないかというオファーを派遣会社から受けているからです。

となると、たった1か月の給料のために労力を使うのはもったいないし、何より僕に有利なオファーをくれた派遣会社の印象を悪くしたくない、というのもあります。
コロナ不況でその新しい派遣先の話がなくなるなんてこともあり得るので現在考え中です。

Eの労使協定内容 その他の報酬や手当

その他、大きな変更が「昇級、賞与、退職金」の項目です。
こうあります、

昇給:別表参照。評価シート、職務内容、成果、勤務評価等を勘案して行う場合がある
賞与:別表参照。評価シート、職務内容、成果、勤務評価等を勘案して入社6か月後より12月、7月に支給する。(但し会社業績による)
退職金:別表参照。有(3年以上在籍した社員)。起算日は退職金制度制定の2020年4月1日とする。

説明をつけ加えると、
今まで、交渉しても上がる見込みゼロだった時給が上がる可能性が出てきました!
上記の賃金の決め方の表にもありましたが、能力・経験が上がれば国の基準値が上がるわけですから当然ですね。

これまでゼロだったボーナス もらえそうです。ただ「少ない」とは言われました。この4月から起算して6か月後とのことで最初の賞与は今年の12月になりそうです。

これも少ないらしいけど 退職金ももらえそうです。
退職金に関する規定は派遣会社の正社員の規定と同一にするというものでした。こ派遣会社スタッフの担当さんも少ないんだそうです。

次に通勤手当。ちなみにEは車通勤で、この辺りではほとんどの人が車通勤です。
これまで一律月1,500円だったのが約1,000円上がりました
これも派遣会社の正社員の通勤手当の規定と同一にするという措置でした。

労使協定の内容で変化があったものは以上です。
次に書面には書いていない事項です。

変わったわけではないんですが改めて言われたのが、葬式や結婚などの際の慶弔休暇はなし。つまり葬式で休むと無給で欠勤扱い、または有給取得が必要というわけです。これも派遣会社の正社員もないそうで、担当さんも嘆いていました。

それと、派遣先の企業がこれまで皆勤手当を月に5,000円出していて、Eはこの皆勤手当を毎回何としてももらおうと休まず遅刻せずがんばっていたんですが一律なくなるそうです。
これは、派遣先の同一労働同一賃金対策のひとつでもあるようです。
これについてはこの後触れます。

Eの待遇変更まとめ

プラス面は

・経験値が増えて能力アップすれば時給が上がるかも
・ボーナス、退職金あり
・通勤手当が約1,000円アップ

マイナス面は

・皆勤手当の5,000円が廃止

というわけで、現状5,000円の皆勤手当廃止が響いて4,000円ほどのマイナスです。

ちなみにEは来月、派遣会社は同じで今より時給のいいコンピューター関連の派遣先に移れる可能性が浮上しています。
上記の皆勤手当のマイナスは今現在の派遣先独自の規定だったので、次の派遣先に移ればプラス面だけが引き継がれるので、今回のEの同一労働同一賃金、働き方改革は寄り切りでかろうじて勝ちといたところでしょうか。

結局企業側は、今日の本題

最後にEの派遣先企業の同一労働同一賃金待遇です。
この辺りでは1、2を争う大企業で上場企業です。上場企業ということはつまり、そこそこコンプライアンスを(株主の目を)気にしているはずです。
労働争議が起これば株式市場は敏感に反応しますからね。
そして労働組合があります。

Eの職場には僕達派遣社員の他に正社員が3名ほどいて、さらに期間工と呼ばれる非正規労働者も2人います。3交代制で24時間稼働している全部で20人ほどのセクションです。

期間工は派遣社員と違い派遣先企業の直接雇用です。先日よく話す期間工の人に4月からの待遇変更について聞いてみました。
当然ですが、あからさまに根掘り葉掘り聞いたわけではないしその人は労働法とか同一労働同一賃金とかの詳しい制度を知っているわけではありません。
さらに言うと彼の記憶が正しいかどうか、事実をそのまましゃべってくれたかどうかもわかりませんが話してくれた内容をお伝えします。

・時給が150円下がった(不利益変更!
・残業代が少し上がる(時間外労働の割増率を上げた?)
・上記の結果、トータルすれば給料アップになる、と言われた(断言しますが、ちょっと考えればすぐに嘘だとわかる幼稚なごまかしです)

とのことです。

僕が過去の記事で予想したとおりになりました。
期間工(直接雇用の非正規労働者)の場合、派遣会社が採用するような 待遇を 世の中の同種の業務に従事する一般的な労働者と均衡させるという形の労使協定方式はありません。直接自分の会社の正社員待遇と均等・均衡させることになります。

期間工の時給が下がったいうことは、均衡の基準となる正社員の賃金も下げている可能性があります(未確認です)。そこまでするとしたら背景に業績悪化があるのかもしれません。
もともと期間工の時給の水準が正社員を越えていて、下げることで正社員に合わせたとも考えられますが未確認です。

業績悪化については実際、ここ数カ月僕のセクションでの仕事量は目に見えて減っていて残業・休出ともに1年前よりかなり減っています(Eが他の派遣先を探しているのもそのせいです)。
だから例えば法律上25%以上とされている時間外労働の割増率をそれ以上に(25%を上回れば会社が自由に決められる)設定したのかもしれませんが休出・残業が極端に減っている現在、給料全体はマイナスのはずです。

この給料を下げたり手当をなくすなどといった不利益変更は法律上、原則認められませんが、業績不振の際など要件をクリアすれば絶対できないわけではありません。
要件とは、

  • 労働者の受ける不利益の程度が妥当か
  • 変更の必要性
  • 労働組合等との交渉
  • 変更内容の周知

などなど、結構ハードルが高いです。
それでも実行したということは労働組合も合意したということで、おそらくここも御用組合(会社がコントロールしていて労働者でなく会社の利益のために動く労働組合)かな、という感想です。
この論理でEの皆勤手当も廃止になったわけです。

Eの派遣先企業の期間工の人達の同一労働同一賃金の働き方改革は推定負け、の様です。

今日のまとめ

冒頭にも書きましたが、企業は国が労働者の待遇改善を促すような施策を行っても簡単には労働条件を上げようとはしません。労働者側からのコントロールは極力排除しようとします。
そのことは、今回紹介したEの雀の涙の待遇改善や、派遣先企業で賃金を下げる不利益変更がされたことからもわかったかと思います。

恐らく多くの派遣社員や非正規労働者の人たちも同じような結果に終わったことでしょう。

そして、
今回の同一労働同一賃金の法改正にはたくさんの 抜け穴が 用意されています。
次回はそのあたりの法改正の不備(意図的?)や非正規労働者の待遇の今後について語りたいと思います。
ではまた!

Eは現役社労士時代に毎月この雑誌で新しい情報を得ていました。

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