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才能がなくて努力しても伸びなかったこと② 簿記会計、プロは超すごかった

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人は何かしら、どんなに努力しても人並みにできない、または一流のプロには到底追いつけない、というものがあることでしょう。

前回の記事では、子供の頃から楽器がどうにも弾けない、指が動かない、でも音楽大好きだったから長年練習を続けてできる範囲で楽しめるようになった、という話をしました。

  前回の記事です。



今回は簿記会計について語ります。
大学の簿記の授業での挫折、社会保険労務士として入った会計事務所で見たプロのすごさ、などについて語ります。

大学時代の簿記挫折体験

Eの簿記との最初の出会いは大学1年生の時でした。
日本大学商学部に入学すると「簿記論」という必修授業がありました。
毎週土曜日の午前中の2コマの授業を受けていました。

簿記についての予備知識は全くなく、興味もなく、数学が苦手だったこともありイメージ的にやりたくない、と思っていました。
日大商学部は会計学科もあることから公認会計士や税理士の資格を目指している学生も多く、入学前後から大原などの学校に通ったりと猛烈に簿記の勉強をしている学生もいました。
20数年後に働くことになる税理士という仕事が、どんなものかも知らないEでしたが、初授業に出席
大学の講師が教壇に立ち授業がはじまりました。

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必修科目「簿記論」の授業

他のほとんどの授業の講師がそうなんですが、大学一年生当時のEのように全く興味すらない学生もいる中でどういう心持でいて何を教えたいのか、はたまた何も教えたくないのかはわかりませんが、ほとんど授業の内容は理解できませんでした

講師は初日の授業で、日商簿記検定3~2級に合格できる内容の授業をする、と宣言しました。
それから約20年後に日商簿記の試験勉強をすることになってわかることなんですが、その講師の授業はあまりにもわかりにくく、まるで学生に簿記の仕組みについて知られたくないのかと思わせるほどでした。
これは当時授業を聞きながらホントにそう思っていました。

例えば「粗利」や「手形」などの用語をなんの説明もなく織り交ぜて、こっちがすべて承知しているかのように教えられるのでついていけません。
印象に残っているのが、その講師の専門だか何だか知りませんが、「引当金」についてはやたらと詳しく解説していて(理解はできませんでしたが)土曜日の午前中全部を使って「引当金」についてしゃべっていました。

もちろん授業の予習復習をしないEも悪いとは思いますが、簿記にかけらも興味を持つことができませんでした。

「簿記論」の期末試験

1年間の必修授業の最後の期末試験。
毎年ここが出る、という問題が学生の間に流布していました。
その問題というのは日商簿記の試験に出てくるような、仕訳などの記帳問題財務諸表の空欄を埋める問題などです。

必修授業であり、単位が取れなければ来年また受けなければならない、落とせない
というわけで、試験1週間くらい前から出ると言われているテキストの該当のページの勉強を始めました。

が、勉強というよりは「解読」でした。
講師の授業のわかりにくさに勝るとも劣らない、大学の教科書のわかりにくさ

Eが試験準備としてやったことは、これでした。

①教科書の例題と解答から、簿記の仕組みを解読する
②同じ例題を別の数字で出題された場合の解答法を自ら確立する

普通、教科書って簿記の仕組みを解説していたり、解答法を説明していたりするものですよね?
この一週間の作業によって見事、ギリギリの成績で単位を取ることができたのでしたー!

そんなわけで、一年間の授業でEはすっかりこう思うようになりました。

自分は致命的に簿記の才能がないから一生関わらないようにしよう。

Eにとっての楽器と同じように、簿記についての能力は他人より完全に劣っているものとして心に刻み込まれたのでした。

日商簿記試験に挑戦

それから20余年、Eは社会保険労務士の2回目の試験が終了。
試験の感触としては合格は五分五分。
しばらくのんびり過ごしたEでしたが、合格後のことも考え始めていました。

資格を生かしての独立開業を目指していたEですが、まずは実務経験が必要。
地元の社労士の求人は数がとても少なく、社労士の実務経験ゼロで既に40代に突入していたEには狭き門。
その中でいくつかは会計事務所が社労士の募集を出している。
となると、簿記の知識が必要になるかも。資格を取っておいた方が採用されやすいかも。

ということで、あの致命的に才能のない簿記の資格試験に挑戦しなくてはならない状況に追い込まれたEでした。


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簿記三級を受験

まず、Book-offで100円+税の簿記三級テキストの古本を購入。
社労士試験の勉強をしていた時のように、再びファミレスやファストフード店で勉強開始。

と、その100円+税で買ったテキストのわかりやすいこと!

大学一年生の1年間受けた授業でさっぱり理解できなかった簿記の仕組みが面白いように理解できるのでした。
まるで、長年迷宮入りしていた事件が、ひとつの糸口で全てが明らかになったかのような。

「え~減価償却ってこういうことだったの~」「同じ借方でも資産と費用っていう区別があったんだ~」、長年の謎がどんどん解けていく~
そう、こんなの基本中の基本。あの1年間の授業、どれだけムダな時間を費やしたことか。

そして、問題集にも取り組み、試験直前には模擬試験問題を解く。
どのテキストも解説がわかりやすい
直近の日商簿記検定三級を受けて順調に合格できました。

これでわかったのが、Eは簿記の才能ないわけじゃなかった、

大学の講師の授業とテキストが意味不明すぎただけだった!

ということでした。

そしてEは社労士試験にも合格。三級合格から半年ほどして簿記二級にも合格
翌年、社労士として登録をするための事務指定講習を経て会計事務所に就職するのでした。

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近年の簿記テキストはホントにわかりやすくできています。

会計事務所での挫折

過去の記事で述べていますが、社労士資格を取って入社した会計事務所で、Eは当初社労士の業務をすることはできず、他の多くの会計職員と同じように税務会計の仕事をすることになりました。

簿記二級までを順調に取得して、簿記に対する苦手意識はなくなってはいました。
会計で生きていくしかないのか、と考えて税理士試験科目のひとつ「簿記論」(大学の授業の名前と同じ…)の勉強も始めていました。
しかし、この先に本当の挫折が待ち構えていたのでした。

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電卓ショック

これも過去の記事で述べましたが、簿記二級程度の知識では会計事務所の実務には到底及びません。
日々の業務、そして確定申告時期を苦労して乗り越えて、個人事業主の会計ならなんとかこなせるようになったEでした。

が、そこで見たベテランの会計職員や、プロの税理士の実務能力の高さには驚かされました。
そもそもの基本、電卓の使い方からして彼らの技術はEをはるかに超えていました。

税理士試験科目の「簿記論」の通信講座を受けていたEでしたが、講座の冒頭に電卓の使い方の講習がありました。
それによるとベストな使い方は、

「左手で」「指5本をつかって」「ブラインドタッチで」入力する。

もちろんこれ、かなり難しいです。一筋縄ではいきません。
これが難しい場合、

「右手で」「ペンは親指と手の平でで保持して」「指三本で」入力する。

という方法も教えてもらいました。Eは基本的に今でもこのやり方で電卓を打ちます。
どのやり方をしたとしても、根本的に重要なことは「キーを打ち間違えない」ということです。

たぶんこれは楽器の才能とも関連があるんじゃないかと思っているんですが、Eは「正確に、打ち間違えずにキーを打つ」ということができません。
例えば、関与先の1か月の売上帳を確認するために1日から末日までの売上を電卓で計算します。
一通り打ってみて、どこかで打ち間違えているような気がしてもう一度検算してみます。

すると最初の合計と違う数字が出ます。
もう一度やってみるとまた違う合計になります。
しょうがないから、一つ一つ間違えないようにゆっくり計算します。
始めからそうすればよかった、となります。

事務所にいると周りで誰かが電卓を使っています。
みんなカタカタとよどみなくキーを打っています。
Eのように打ち間違えてやり直す、という光景はほとんど見ることがありません。

Eは対策として、できるだけ電卓ではなくexcelを使うようにしました。
excelに入力して合計を出せば、入力を間違えていたとしても履歴が残っていて、あとからそこだけ修正できます。
関与先によっていつも決まって計算するものは、excelでフォーマットを作って計算するようにしました。

ま、これが「才能がなければできる範囲でアレンジする」というEのできない時の生き残り法です。

仕訳日記帳ショック

会計事務所の職員の業務として、関与先の経理担当者が会計ソフトにつけた記帳のチェックがあります。
特にEが担当していたような零細企業では経理担当者といってもほぼ素人の美容院の店主だったり、事業主の奥さんだったりして仕訳の間違いが結構あります。

チェックする時は会計ソフトの仕訳日記帳のページをマウスでスクロールしながら見ます。
当時のEの場合、マウスのホイールを回しながら、

「コロ………、コロ………、コロ………、あれ?なんか違う、どうすればいいんだっけ?……(資料を調べる)……カタカタカタ(修正)コロ……、コロ…

とこんなペースです。
間違いのないように、借方、貸方、摘要欄をひとつひとつ確実に確認しながらの作業です。

これが事務所のベテランだと、

「コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ、カタカタ(修正)コロコロコロコロコロ~」

ホイールの回転が止まりません。

いまだに理解できないんですが、彼らは仕訳の一行一行をまるで一つの文字くらいに認識しているように見えました。
それでいて仕訳の間違えも確実に見つけて修正しています。

これ、Eは会計職員として働き続けたとしても生物学的に無理だな、と感じていました。

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当時この本を常に携行していました。
具体的な取引についても解説があります。会計初心者必見!

会計資格者ショック

事務所には70代の大ボスの他に税理士資格者がもう一人いました。
高齢の大ボスは事務所の経営者として精力的に活動していましたが、会計実務はほとんどやっていませんでした。
代わりにボスの親族が主力の税理士として切り盛りしていました。その税理士がまたすごくて。

その税理士を見ていると、万が一試験に受かって税理士になれたとしても、プロとして渡り合っていくのは無理だなと思わせるほどやり手だったんですが、電卓の打ち方からしてものすごくて。

その税理士は、事務所の数百件ある法人の関与先の決算を全て最終チェックしていました。会計担当者が作成した財務諸表と法人税申告書をチェックする姿は圧巻でした。

日がな一日資料をものすごい勢いでめくりながら、もちろん左手で(ブラインドタッチで)猛烈に電卓を叩いています。

それだけではなく、あるとき会計職員の中でもかなりのベテランが作った決算に、レアで細かい税法上の間違いがあったようで、その税理士が見つけて指摘していました。
指摘されたベテランは「いやー、さすがだわ」と感心していました。

と、一般の会計職員だけでもEには遠い存在なのに、そんな光景を見せられるともう「会計ムリ」となってしまします。

ただ、その税理士はやり手だけに周りには厳しく、特に怠慢によるミスやごまかしは厳しく指摘され、時には徹底的に叱責されます。
初心者に対しても容赦がなく、Eも何度も長時間の叱責を受けました。
実際、Eが30分も立たされて理詰めの叱責を受けて席に戻ると、他の会計職員から「それ俺たちでも難しいよ」と言われることもありました。
大ボスとともに事務所に新人が入ってもすぐ辞めていく元凶となっていました。

その税理士はEの人生の中でも「こいつには到底かなわない」と感じた何人かの人間のひとりでした。
あの職員への苛烈な叱責は、通常ならパワハラで訴えれば充分勝てる状況だったと思いますが、敵に回してはいけない、と本能的に感じて争いを起こす気すら起きませんでした。

資格試験の選択は自分に合っているかどうか慎重に検討した方がいいと思います。
が、簿記の知識は全ての人が勉強しておいて損はありません!

会計の才能は全くなかったのか

とはいえ、Eが子供の頃に全く楽器が弾けなかったように、簿記会計に関しても先天的に才能が欠如していたのかというとそうでもないと思っています。
というのは、Eよりもっと下がいたからです。
事務所の先輩社労士でした。

事務所の方針として、会計担当者でなくても経営の現場を知ることが大切、とやらで先輩社労士もわずかですが会計の担当を持っていました。
先輩社労士は普段から「早く会計業務全部外してほしい」とこぼしていたんですが、Eが会計の部署から社労士の部署に移った後のある時のことでした。

事務所は複数の法人や団体を持っていて、そのうちEと先輩社労士が関わっていた団体の過去の会計に問題があり、当時の会計資料をチェックして修正することになりました。

休日出勤して二人して、辞めた前任者が杜撰に処理した会計の仕訳日記帳や領収証を分担して照合・チェックするんですが、Eは問題のある個所を次々と見つけていくのに先輩社労士は全然進みません
先輩の見ている資料をEが見ると、明らかな間違いがつぎつぎに見つかるんですが、どうやら先輩は会計経験はEより長いはずなのにあまり簿記を理解できていないよう。

先輩社労士にとって簿記会計は、生物学的に困難なことのようでした。
社労士としてはバリバリやっていて営業力もある人なのに、こんな弱点もあるのか、と少し安心した出来事でした。

まとめ

もしあのまま腰を据えて会計の仕事にとりくんでいたら、職場が正常な働き方ができる環境で辞めずに続けられていたら、電卓や仕訳チェックが素早くできなかったとしても、社労士資格のある会計職員としてそこそこ活躍していたことだろうと思います。

あの事務所の二人の税理士は人格はともかくとして、プロとしてはマジですごかったです。
大ボスは経営者として過去に地元の長者番付にも載るほどの敏腕だったし、親族の税理士は今回述べたとおりのバリバリのやり手。

大学の授業で挫折して、簿記の試験で一度は乗り越えはしたものの、やっぱり簿記会計の道はEにとって挫折であることには変わりはありませんでした。

今後もEの才能がなくて挫折した体験を語っていきます。
次回をお楽しみに!



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