社労士試験まであと約2カ月ですね。
勉強の量も質もこれまでよりギアをひとつ上げていかなければなりませんね。
今日は直前期の勉強の質を上げるための脳のメカニズムに基づいた勉強法を紹介します。
試験日まで2か月を切ったこれからの勉強はとにかく効率を上げる、短い時間で最大限の勉強効果を得る(点数を上げる)ということを強く意識しなければなりません。
Eが実践し、更に磨き上げたのが、試験開始時間「逆算」勉強スケジュールです。
これは簡単に言えば、記憶が定着していない項目の直前期の勉強はまず記憶の持続時間を把握。
試験開始時間に(取捨選択した上での)全ての項目が記憶の持続時間内に入るように勉強スケジュールを組む、というものです。
ではこれについて解説します。
前回の振り返り、過去問で勉強の「質」を上げる
「量」は単純に勉強時間を増やせば解決します。
が、これまで勉強を頑張ってきてこれ以上勉強量を増やすのってきついですよね。
そうだとすれば「質」を上げればいいわけです。
どう上げたらいいんでしょうか。
方法のひとつは前回の記事で述べました。
過去問の活用です。
簡単に振り返ると、
過去問を利用して項目ごとの出題率を把握して勉強の重点を取捨選択して効率を上げるということでした。
働きながら、子育てしながら、と限られた時間の中で勉強する人にとって合格レベルに達するには勉強の効率を上げるしかありません。
そして究極に「質」を上げるのが今回の、試験開始時間「逆算」勉強スケジュールです。
脳の記憶メカニズムを意識する
社労士試験ってかなりの割合で「記憶力テスト」の要素満載ですよね。
これも過去の記事で述べましたが、記憶力以外にひとつ重要な要素があるとすれば「運」です。
「運」の話は置いといて、今回は記憶メカニズムに基づいた勉強法です。
とは言っても、別に「エビングハウスの忘却曲線」とか「ワーキングメモリ」とかいう難しい脳科学の理論を意識する必要はありません。
普段勉強していると自然に、
「この項目はもういつどのように問われても大丈夫」とか「この支給条件は1週間もすると細かいところを忘れちゃうな」とか、「この表の数字は何回やっても10分で忘れる~」とか、
自分の「記憶の持続時間」ってなんとなく把握していますよね。
それに学術用語ではあるけど「忘却曲線」とか「ワーキングメモリ(作業記憶)」という言葉もなんとなく字面からわかりますよね。
要するに「定着した記憶」かそうでないかということです。
それを活用するだけです。
記憶の持続時間による、試験開始時間「逆算」ランキング
現在6月末、試験2か月前、これまでの勉強でなんとなく把握していた、項目ごとの「記憶の持続時間」を今から始める「基本書の回転」をしながら分類していきましょう。
もちろん、前回記事で述べた過去問に基づいた重点項目に絞った上でです。
過去問をこなしきれていないという人も自分の感覚で重要度をより分けてもそう外れることはないでしょう。
もう基本書を隅から隅までがっつり読み込むという勉強はやめましょう。
もちろんランク付けだけに集中する必要はありません、通常の基本書回転と同様にしっかりと読み込んでいきましょう。
次の表の①~⑤にランク付けしていきます。
この表は目安です。考え方を示しているにすぎません。
縦軸の「ABC」は単純に「記憶の持続時間」です。
記憶が定着して「もう大丈夫」というものはA
「2、3日~1週間もすれば忘れる」はB
「何回やってもすぐ忘れる」はC
です。
横軸の「高中低」は過去問でつかんだ「出題率、重要度」です。
「よく出てるし実務でも大事そう」は高
「こんな感じの問題出てた」は中
「出たことあるけど重要?」とか「見たことないけど?」は低
といった感じです。
以上の2つの要素を組み合わせて、表のように①~⑤にざっとランク付けをします。
当然ですが、細かく分ける必要はないし分け方は自分なりに工夫してもらっても構いません。やりながらでも修正すればいいです。
とにかく時間の無駄だけは何よりも避けましょう。基本書を読み込みながら自分なりの基準でメモをしていけばいいです。
Eの上記の表の例でいうと、
試験日の試験時間から逆算して、最も直前に確認するのが①で、最も優先度が低いのは⑤、となっています。
試験開始時間「逆算」ランクの付け方
このランキングのおおまかな決定方法を説明します。
例えば、
安衛法の「安全衛生管理体制」(統括安全衛生責任者など)は超頻出項目です。
しかもボリュームも多くの個別の数字(人数)も覚えなければなりません。
が、事業の規模と管理体制の強度に関連性があるので、完全に無機質な語句や数字でなく、そこまで記憶持続時間が短い項目とは言えません。
従って、
6月下旬の今の段階でもかなり正確に、7割くらいの確度では記憶しおくべきです。
試験日には最低でも9割以上に持っていく必要があるでしょう。
⇒この項目は重要度高、記憶困難度B
②にランク付けします。
次に、
同じく安衛法の「特定機械」の項目。
デリックの製造につり上げ荷重が何トン以上だと労働局長に届け出るとか(2トン以上だそうです)、個別の機械の届出や免許・技能講習といった項目があります。
建設業界に携わる人でなければデリックだとかクレーンだとか、果ては移動式クレーンだとかなかなかイメージが付きません。
こうなるとそれぞれの要素が脳内で結び付きにくく記憶は困難です。
しかも出題率も低いです。
⇒この項目は重要度低、記憶困難度C
⑤にランク付けします。
※⑤ランクは1年目受験で余裕がなければここで捨てて最終週の基本書の超高速回転で確認するだけでもOKです
その他に安衛法でいえば、
「危険物及び有害物」の項目ででジクロルベンジンを製造するのに誰のの許可が必要だとか(厚生労働大臣だそうです)の個別の危険物、有害物に関する項目も同様です。
基本書の回転の時にこういった低出題率、超記憶困難な⑤該当項目を、毎回完璧に答えられるまで必死に覚えようとしていたとしたらすぐにやめましょう。
ここまでしっかり勉強してきた人ならわかっていると思いますが、そもそも「特定機械」や「危険物及び有害物」は出題率が低い上に出題されてもほとんどの人は答えられません。
これを意識しないで勉強していると、恐ろしく無駄な勉強をしているパターンに陥っていたりします。
さて、ここから試験開始時間「逆算」勉強スケジュールについて説明します。
試験開始時間「逆算」勉強スケジュールとは
8月以降は前述の試験開始時間「逆算」ランクを元に、最直前期の勉強スケジュールを組んで、それに従って勉強していきます。
そのスケジュールのモデルがこれです。
これが、試験開始時間「逆算」勉強スケジュールだ!
この勉強スケジュールについて説明します。
当然、この他に問題演習によるアウトプット、横断テキストによるまとめ勉強も並行してやらなければならないわけですが、今回説明は省きます。
【7月】
この基本書回転(重点を絞る)で項目ごとの直前勉強のランク付けをします。
既に述べましたが、通常の基本書勉強としての位置づけでしっかりと復習してください。
この時点で全体の10%程度の⑤ランクの非重要項目はこれが試験前最後の勉強として切り捨ててしまってもいいでしょう。
これだけはくれぐれも注意してください。
丁寧に付箋を貼るなどしてランク付けの作業自体に時間をかけることは厳禁です。
基本書に鉛筆でざっと書き込むだけで充分です。
Eは受験生当時、教材への書き込みは鉛筆のみでした。
赤ペンや蛍光ペンなし、付箋もなし、時々ページの端を折るくらいのものでした。
だからといって後で見ずらいとかの問題もなかったです。
付箋を貼ったり別のペンを持ち替えたりと作業する時間は積み重なるとかなりの時間ロスです。
【8月】
決定したランクに従ってランクの低いほうから復習していきます(⑤→①)。
このスケジュールは試験日の試験開始時間から逆算して組み立ててください。
途中でスケジュールが狂っても最終週は変えないようにします。
これによって試験範囲のほとんどが記憶の持続時間内に収まることになります。
この回転は勉強につぎ込める時間量に応じて何度やってもいいですが、直前前に最低一回は回転させておきましょう。
この回転で記憶が確実レベルにランクアップしたり、案外忘れていてランクダウンしたり、とランキングは当然入れ替わることと思います。
最終週に向けてブラッシュアップしておきましょう。
と、
ここまではすべて最終段階への準備です。
とにかく「試験日の試験開始時間」に最大の記憶量をもって試験に臨むために効率を極めた勉強法がこの試験開始時間「逆算」勉強スケジュールです。
もう一つ大事なことは、
最終目標地点は「試験日」ではありません、「試験開始時間」です。
上記の「逆算」ランキング最上位の①の項目(試験頻出項目で、しかも超絶覚えにくいもの)は試験開始時間の可能な限りのギリギリ直前に復習・確認を行います。
試験官に「机のものを全部しまってください」と告げられるその瞬間です。
試験前最終週の「超高速基本書回転」の際は試験前日、試験日の試験開始時間前に確認する箇所をいくつかピックアップしておきましょう。
Eの成功事例
Eの試験日の過ごし方はこうでした。
朝は試験の約4時間前に起きて最直前に確認すると決めていた基本書のページを見ながらホテルの朝食をとり、出かける準備をしました。
電車で試験会場の最寄駅まで行き、
駅から徒歩5分ほどの道のりを歩いて試験会場に着き、
試験開始まで残り約一時間、
Eはこの時間すべて、可能な限り本を開いてあらかじめ決めていた最終確認事項に何度も目を通していました。
試験会場までの道も車が通らない道なら本を開きながら歩いていました。
電車の乗客の何人かはEと同じ受験生で、電車を降りて試験会場まで同じ経路をたどりましたが本を開いている人はほぼいなかったことを覚えています。
世間ではよく試験当日の過ごし方として「当日になってあがいているようではだめだ」とか言われていて、それを盲信している人がほとんどだからだと思いますが、
社労士試験に関しては大間違いです。
もう一度言いますが、これは「記憶力テスト」です。
TOEICとも違うし、簿記の試験とも違います。
既に膨大な試験範囲の暗記に取り組んできて極限に飽和状態の脳に、数字を含んだりする細かい項目を覚えていられるでしょうか。
あらゆることを犠牲にして1年間すべてを勉強に費やした努力が報われるか、成果なくすべてが水泡に帰すかどうかという時に、
他人の目など1ミリたりとも気になりはしませんでした。
そんなEが「机の上のものをしまう」ギリギリ直前、最後に確認したのは忘れもしない、
雇用保険法の「特定受給資格者及び一部の特定理由離職者の基本手当の所定給付日数」でした。
この数字だらけの表です。
特定受給資格者及び一部の特定理由離職者の基本手当の所定給付日数
この、数字に規則性がありそうでない超絶覚えにくい表はEの中でもかなり手を焼いた項目のひとつでした。
覚えにくい上にすぐ忘れる、30分もあれば確実に忘れる、でも重要。まさに①ランク筆頭です。
GW前くらいに70%程度の確度での確認をしてからは、基本書等で通り過ぎる程度で流し、次にしっかり確認したのはまさに試験前日でした。
どうせすぐに忘れることに無駄な時間は使わず、最終的に短期記憶だけで乗り切ろうと腹をくくりました。
前日夜に一旦覚えましたが、その記憶も数時間しか持たないことは確認済み。
Eはこの表はその年、「出る可能性大」と分析していて、もし選択式の論点にでもなってしまったらやばいことになる、と危機感を持っていました。
そして、この試験開始時間「逆算」スケジュールの最終重要項目として位置付けたわけです。
結果、
見事に試験に出ました。択一式で、かなり濃厚に。
平成23年(2011年)の択一式、雇用保険法の問3でした。
Eは余計なことを考えたりして記憶が濁らないうちにすぐさま問題用紙の余白に上記の表をササっと書いてしまいました。
結果は正解!
とはいえ正直ここまで準備していても正解の自信は6割といったところでした。
合格の年はこのように超直前確認のおかげでで正解できた問題が2~3点はあったと思います。
結果的に択一式は余裕をもって合格基準点をクリアすることができました。
択一式が2点足りずに不合格だった1年目にこの勉強法を取り入れていたらもしかしたら、とも思いますが、まあこれはどうにもなりません。
この、試験開始時間「逆算」スケジュールは日常の勉強の積み上げで、分析と試行錯誤の中で自然に出来上がったものですから。
だけど、今回この記事を読んだ皆さんはラッキーです。
今日からでも取り入れてください。
まとめ
前回と今回の記事の内容を短くまとめます。
【6月末まで】
過去問を5年分、出題年度別(科目別でなく)で解いて次のことを理解する。
①試験本番の時間配分
②各項目の出題率の傾向
【7月】
①過去問でつかんだ出題率の傾向を元に勉強の重点を絞って基本書の回転
②同時に現在の記憶の定着状況と各項目の記憶持続時間を把握
その上で、
重要度を加味して直前勉強のために項目ごとのランキングをつける
【8月】
上記のランキングに従って「試験開始時間」から逆算した勉強スケジュールを組み、それに従った確認作業をする。
Eは受験1年目の時、特に直前対策もなく、定着している記憶も少なかったこともあり漫然と基本書を隅から隅まで読み込むことと横断学習を繰り返すだけでした。
過去問の分析も薄く、出題率の意識もそんなにありませんでした。
2年目からは勉強の進め方について常に考えるようになりました。
この地獄の勉強の日々を絶対に今年で終わらせたい、と強烈に思っていたからです。
早く社労士になって独立開業したい、という思いがベースにあったことは言うまでもありません。
今回紹介した勉強スケジュールの立て方は確実に効果があります(点数が上がります)。
ただし、勉強の最終地点は試験開始時間ですが、社労士試験の最終地点は試験終了時間です。
これからもEの経験をもとにした情報をお届けしたいと思います。
ではまた!