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【ブラック企業】パワハラのみならず不法行為の実行犯!自分が加害者になる前に声を上げよう

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ここのところ(2023年7月末)ある業界最大手の自動車関連企業の起こした数々の不法行為が明るみに出て世の中を騒がせています。
自動車整備に絡んだ保険金詐欺や、店舗前の街路樹の除草剤問題、そして役員や上司による数々のパワハラ問題

今回の記事は某自動車関連企業の起こした犯罪や反社会的行為を糾弾しようというものではありません。そちらは現在世の中に大量に出回っている報道等に譲ります。
この事件でEが最も関心を持ったのは別のところにあります。

それは、
「なぜパワハラを受けていたり、数々の不法行為をさせられた従業員は声を上げなかったのか」
という疑問です。
Eもかつて働いていた会社による不法行為に遭遇したことがありますが、それらに対抗する手段は意外にたくさんあります。
労働基準監督署という公的機関もあれば、現代はSNSに匿名で広く拡散するなどの手段もあります。

それにもかかわらず、なぜ自分自身が不法行為の加害者になり、それが日本中で大問題になってまで声を上げることなく、ただただ沈黙して従っていたのか?
今回は元社会保険労務士Eがそのあたりを考えます。

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「沈黙の従業員」の考察

これはEの完全なる想像です。自動車関連の業界や業務についてはほとんど何も知りません。
そして多分にE自身の経験を元にしています。

架空の登場人物は某自動車関連企業に中途入社した20代後半の若者です。
彼は独身、前職はレストランチェーンの店長(かつてのE)と仮定します。

①自動車関連企業に採用され、建物の上に大きな青い看板を擁する店舗に営業として配属される。

②入社早々、業務に関しての大した教育も受けずに顧客の対応に当たらせられ

③仕事について理解が浅いから当然ミスをする。

④ミスの度に店長から苛烈な叱責を受ける。反論の余地は与えられない。

⑤時々本社から会社幹部が視察に来ては業務の細部、特に店舗の外観について従業員に強圧的な言動で指摘する場面を毎回のように見かける

⑥会社ぐるみで顧客の車を故意に損傷させるなどで保険金が絡んだ詐欺を指導され、実行する

⑦店舗メンテナンスとして店舗前の街路樹に除草剤を蒔く作業を教えられ、実行する

⑧日々の業務は所定労働時間内では到底終わらず、長時間労働や休日返上が当たり前になる。

超過勤務手当は完全には支払われていないが、同業他社や一般の同年齢と比較して給料は高い

と、このような新入社員期を送ります。
日々店長から受ける罵詈雑言や、幹部が店長に対して発する罵詈雑言にも恐怖を覚えますが「彼は常に前向きで、ストレス耐性も高い」という特性があり、同じ時期に入社した同期が次々と辞めていく一方、彼は業績を伸ばし始めます。
さて、その後の彼の未来は?

⑩営業成績も好調で実力が認められ、退職者の代わりに店舗での役職者となる。

⑪給料もかなり上がる。が、その分売上ノルマの達成に苦しむようになる。

⑫社内のSNSのグループチャットに複数加入させられ、勤務時間外も常にチャットが届く。

⑬グループチャットでは罵詈雑言が飛び交っていて、自分が標的になることもある。

⑭他の人が標的になっている時には自分も率先して便乗する。

⑮ある時パワハラ店長がちょっとしたミスで即降格、自分より下の平社員になる。

⑯これまでのパワハラの報復とばかりに、降格した店長を足蹴に扱い、社内での言葉遣いも荒くなる。

⑰新入社員が入ってくると、彼は車の損傷のさせ方など保険金詐欺の手口を指導する

と、赤字で示した部分が彼が「不法行為の実行犯」となった行為を表しています。
彼は完全にモラルを失った組織に組み込まれていきます。
言ってみれば、反社会的勢力の手先です。

そして遂に、次に起こることがこれです。

⑱会社の不法行為が大々的に報道され、その手口や実行した人物が次々に明るみに出る。

⑲警察や行政も動き出し、刑事告発や行政処分の雨あられ状態に陥る。

⑳彼は自分が犯した不法行為の告発がいつ来るかと戦々恐々と閑古鳥が鳴く店舗で日々を過ごす。

問題発覚!

さて、ここに至って彼の会社は世間から袋叩き
店舗前の通行人からも誹謗中傷の言葉を投げかけられます。
当然、客足はほとんどなくなり業績を伸ばすどころではなく、その代わりに社内はこれまでの不法行為の隠ぺいに忙殺されます。

これまでの罵詈雑言で埋め尽くされたグループチャットは全て消去されました。
が、多くの社員が多数のスクショを保存しているようです。
会社幹部の言葉は不自然なまでに丁寧なものに変わりました。
車を故意に損傷させた件では警察へ無数の被害届が出されています。

彼自身も気が気ではありません。
これまで何十台もの車をへこませたり傷つけたりしました。
そればかりか、車の損傷を広げる手口を指導する際にある新人が「もっとよく勉強したいから」と彼の不法行為の指導の一部始終を動画撮影していました。
その部下はすでに退職済み


いかに会社の慣習でしたこととはいえ、複数の器物損壊罪と詐欺の実行犯であるという事実は動かないし数多くの目撃者がいて、動画という動かぬ証拠まで残しています。

おまけに彼の部下の中には、彼からの罵詈雑言による叱責が原因でうつ病を発症して退職した者もいます。車を損傷させる指導のあの動画を撮影した新人がまさにその部下でした。
その部下は彼の叱責を受ける際、こっそりスマホをいじっていたりしたのを見たことがあります。彼の叱責がもし録音されていて、パワハラ裁判で証拠として提出されれば負けは確実です。

刑事告発、そしてパワハラ告発におびえる彼。
この架空の彼のような姿は、今頃(2023年7月末)某自動車関連企業の全国の支店の至る所で現実のものとなっていることでしょう。

誰が悪い?のか

今回の数々の不法行為、もちろん最も責任が重いのは経営トップ、そして経営幹部です。
理由は車を損傷させるなどの数々の違法行為を知っていながら(断言します)放置、むしろ奨励していたから。
この件の加害者:社長幹部

契約数を取るために癒着していた保険会社も同罪です。
今後、某自動車関連企業とともに最大限の社会的制裁を受けることをEも望んでいます。
この件の加害者:保険会社

実質的に経営の実務を行っていたというナンバーツーでもある二代目も重罪です。
SNSで罵詈雑言を交わし合う社内の風潮を作った元凶は彼であると想像します。
この件の加害者:二代目、とそれに追随した従業員

そして、実際の器物損壊などの犯行が行われた店舗では?
罪悪感がどれほどあったのかはわかりようがありませんが、多くの従業員が不法行為の実行犯になっています。
彼らにしてみれば様々な原因があって、実はやりたくなんかなかったと言いたいでしょうが、車への器物損壊、街路樹への除草剤散布、犯罪です。
そして日常茶飯事となっていた幹部から店舗に至るまでのパワハラ行為

これらを複数実行していた従業員もいるでしょうが、れっきとした犯罪者です。
器物損壊罪や詐欺罪は刑法の規定で、有罪となれば前科がつきます。
この件の加害者(実行犯):従業員

叱責やノルマなど圧力を受けていたから、という言い訳があるかもですが、不法行為を犯すことによって会社により多くの利益を与え、一般より高い給料をもらっていたことも事実です。
例えばプラックバイトのオレオレ詐欺の受け子や高齢者宅に押し入る強盗は依頼者からかなり高額な報酬をもらっていることでしょう。

彼ら加害行為をした従業員に同情したい気持ちもなくはないけど、やった行為は許しがたい、自業自得、というのが多くの意見ではないでしょうか?
では、彼らはこうなる前に引き返せなかったんでしょうか?

Eの経験談

ここからはEの経験です。

Eはかなり悪質な違法行為をする職場に二つほど遭遇したことがあります。

①かつて日本のブラック企業の代名詞となっていた居酒屋チェーン店
②地元の、ある事務所

です。

①有名ブラック居酒屋チェーンのケース

①では今から約20年前、6か月と約半月の間(これ重要)常勤のアルバイトとして働いていました。
多くの人は企業名まで察しがついているかと思いますが、店長をはじめとする正社員たちの過酷な働き方、報道されていたように物を投げつけられながら叱責される姿などを目撃しました。
社員間でもかなり汚い言葉が飛び交っていたことは、某自動車関連企業との共通点を感じます。

そして、アルバイトのE自身もある被害を受けました。
Eの働いていた店舗は閉店時間が午前3時でした。つまり客が全て帰る時間が午前3時です。
当然、従業員はその後も片づけに働きます。
が、バイト間で「午前3時以降の給料がカットされている」との噂が。

ある日の業務終了後、午前3時を1時間ほども過ぎた頃、Eが帰ろうとするとレジで締め作業をしているはずの店長が席を外していました。

これ、かねてからEが待ち望んでいた千載一遇のチャンスでした。
Eは噂の真相を確かめるべく、店長が置き去りにしていたある資料を拝見。
と、Eのその日の3時以降の勤務時間をカットしているどこをどう見ても明らかな証拠がそこに!


店長が戻ってくると、Eは問い正しました。
「これどういうことですか?」と。
Eよりだいぶ年下の店長は動揺、「す、すいません」と。
「なるほど、ホントにやってたんですねー」とEは帰ろうとしました。
Eは元々、もし残業代のカットが本当なら労働基準監督署に相談しようと考えていて、こうなったからには翌日(というかその日の昼間)には労働基準監督署に出向こうと決めていました。

と、店長が追いすがってきてこう言いました。
Eさんの給料はちゃんと払いますから、今までの働いた労働時間を教えてください」
Eはこうなることを予想して、何か月か前から業務開始時間と終了時間を毎日手帳にメモしていました。
こういったメモは証拠能力があると聞いていたからです。

後日、店長に正しい労働時間のリストを突きつけ、労働基準監督署への通報は思いとどまりました。結果、その月以降の給料は働いた分が正しく反映されていた模様。
通報しなかった理由には、そこで一緒に働くバイト仲間の中には店に労働調査が入ると困ることになるであろう人(主に外国人)が大勢いたからでした。

某ブラック居酒屋チェーンの店長の間では「午前3時以降のバイトの給料カット」が日常茶飯事となっていて、店長たちもたいした罪悪感もなく「不法行為の実行犯」になっていたわけです。
その後、社員の過酷な労働環境が明るみに出て社会問題になりますが、バイトの給料カットが報道されることはありませんでした。

Eはここでのバイトを6か月∔半月ほどで辞めました。
というのも、バイトとはいえフルタイムで働いていたEは勤務開始後6か月で10日間の有給休暇が付与されます。
店長には「〇月末で辞めます」と伝え、本社の人事に「最後の10日を有給休暇にしてください」と電話しました。もちろん会話を録音しながら。
人事の人からは「そういうのは普通店長に言ってよ」と言われましたが「おたくの会社の店長が信用できるわけないじゃないですか」と言っておきました。

これが功が奏したのか、しっかり10日分の給料が振り込まれました。
10日の有給休暇が付与され、それを全て消化して辞めるに最低限必要な期間。それが「6か月∔約半月」なわけです。
ちなみに、もともとの休みである公休日に有給休暇は使えませんから、全部消化するには「10日+公休日数」も必要となります。

有給休暇の取得の仕方についての過去記事です。

②地元の超ブラック事務所のケース

②では苛烈なパワハラも受けたんですが、長時間勤務にもかかわらず一切残業代を払わないというかなり悪質な事務所でした。

そしてEは同僚や、辞めた従業員と結託して実際に労働基準監督署に訴えました。
詳細は今後、別の機会に語りますが、簡単にいきさつを紹介します。

①仕事の出先で同僚と二人で労働基準監督署に電話。電話口には当時現役社労士だったE
②労基署の回答は「通報」なら強制的な捜査ができる代わりに通報者の名前が相手に知れる、匿名なら「ランダムな労働調査の一環」として訪問する、と。
③同僚と相談して「匿名で」「ランダムな調査の体で」と依頼する。
④数日後Eの不在時に事務所に労基署が来る。が、強制力がないから成果なく帰る
⑤その後いろいろあって、事務所が過去半年分の残業代をある方法で従業員に支払う。長時間勤務もいくらか緩和となる。

すべてがよい方に行ったというわけではなかったんですが、職場環境は大幅に好転しました。それから半年ほどしてEは退職。その後どうなったかは不明です。
Eは自分が最初の通報者だったことは最後まで表向き否定をし続けましたが、ボス以外のほぼ全員が知っていて、称賛や感謝してくれる人さえいました。

この件は「残業代の不払い」という、数字で比較的簡単に不法行為が証明できて、しかも労働基準監督署が取り扱っている案件ですが、「パワハラ」となるとやはり労働審判や民事訴訟を介する必要があるようです。
働きながら自分の職場を提訴、という状況は想像するだけでも難しいでしょうから訴えるにしても「辞めてから」というのが現実的かとも思えます。

ともあれ、パワハラの対処については経験がないので説明は他に譲ります。
例えばこのHP↓↓↓
『パワハラで訴えるには』労働問題弁護士Cafe HP

そしてこの事務所、残業代以外の基本給では某自動車関連企業と同じく、地域では格段に高い給料を払っていました。
成果に対するインセンティブもあり、ベテラン従業員はかなりの高報酬。
とはいえ他より高い分の給料は、通報後も依然として正しく支払われない残業代やパワハラに耐えることへの対価と言っても過言ではありません。

某自動車関連企業の営業マンなどはさらに高い報酬を得ていたようですが、それは「不法行為の実行」という業務への対価も含まれていると思われます。
これって「ブラックバイトへの報酬」と同列のものですよね。

それ、ほしいですか?

ちなみにEは業務として不法行為をしたことは一度もありません。恐らくパワハラ加害をしたこともありません。20代の飲食チェーンの店長を辞めて以来、パワーを持ったこともないし。
もし不法行為を強要されたとしたら、拒否するか辞めるか、はたまた通報するなどしていたでしょう。

「引き返す」ポイントは?

世間ではまだまだパワハラは横行していて、苦しんでいる労働者は世の中に大勢いることでしょう。
会社業務として「不法行為に加担」させられている人も、これまた某自動車関連企業以外にも存在することでしょう。

そういった人たちは今回の事件を見て、何を感じているんでしょうか?
始めに例に出した架空の「彼」
きっと彼は「入ってすぐに辞めておけばよかった」と思っていることでしょう。
パワハラを受けた時点で辞めるチャンスもあったし、タイヤに穴をあけろと指導された時にも辞めるチャンスはあった。

これも完全なるEの想像ですが、まともな人間ならこう考えるんじゃないでしょうか?

【パワハラや過重労働を強いられている人】
①とりあえず、身体や精神の健康を守る
②そのための選択肢、まずは状況を変える。外部の力を借りる
③匿名で相談できるところ(例えば労基署)に電話する
④または匿名で証拠をSNSに上げる
⑤または証拠を報道機関にリークする
⑥提訴を視野に入れて証拠を取っておく

【業務として不法行為に加担している人】
①とりあえず、これ以上の加害を辞める
②そのための選択肢、まずは状況を変える。外部の力を借りる
③匿名で相談できるところ(例えば警察)に電話する
④または匿名で証拠をSNSに上げる
⑤または証拠を報道機関にリークする
⑥犯した不法行為を告発された時に備えて、上からの圧力があったことの証拠を取っておく

どうでしょうか?意外と対処法はありますよね?
では、始めの疑問に戻ります。

「なぜパワハラを受けていたり、数々の不法行為をさせられた従業員は声を上げなかったのか」

この原因をEはこう想像します。

「対処する方法を知らなかったから」

ではないでしょうか?

Eも労基署に初めて電話する時はかなり緊張しました。
一番恐れたのは「通報したことを知られて報復されること」でした。
しかし、労基署の人は親身になって、でき得る対処法を教えてくれました。

辞めた従業員を味方にするのはかなり強力です。
証拠の提出には辞めた従業員の力を借りました。辞めた後なら報復を受ける可能性はかなり低くなりますし、実際に報復などなく未払いの残業代を受け取れるという結果になりました。
そして何より、通報していなければ会社は1ミリも変わることはありませんでした

今現在ブラック企業で苦しんでいるであろう人々の数と比べると、通報されている件数、明るみになっている件数はあまりにも少な過ぎます
状況を変える方法がないと思っている労働者のみなさん、ぜひ声を上げましょう。
そのハードルは意外にも低いです!

まとめ

Eはこういった企業が労働者を苦しめている事件を聞くとマジで激怒します。
ましてや今回は労働者に不法行為にまで手を染めさせて、知らぬ存ぜぬを貫こうとしている経営陣
マジで脳天にキています。

現在の日本の停滞には間違いなくブラック企業による弊害が影響しています。
「ブラック企業だけが大儲けできて業界トップになれる」という日本が抱える大きな不条理を変えられるのは我々労働者です!
今現在ブラック企業で苦しんでいるみなさん、なんとしても自分が置かれている状況、そして日本を変えようではありませんか!

今後も元社労士Eが苦しむ労働者を救う情報を提供していきます。
次回をお楽しみに!

在宅で自由に働けたら一番いいですよね~

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