社労士 社労士試験逆説勉強法

社労士試験逆説勉強法 新章⑤ 社労士試験対策の風説に間違いが多い訳

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2022年の社会保険労務士試験が近づいてきました。
今年の試験は例年通り、8月の第4日曜日の8月28日(日)

今回特筆すべきは、今年から政策により合格発表がこれまでよりだいぶ早まり10月5日(水)となりました。
これにより、完全マークシートのテストなのに発表は11月過ぎという謎の空白期間が短縮されて、合格して次のステップに進むのか、不合格で来年に向けて動き出すか、はたまた諦めるのかの決断が早めにできるので全ての人にとってメリットになることかと思います。

ところで社労士試験の対策って、世間で言われている風説ってありますよね。
例えば「過去問は重要」というものなど。

「過去問は重要」、これは全くもってその通りです。
ただ捉え方を間違えると、例えば同じ過去問を何度も直前期まで解き続ける、などのものすごくムダな作業をしてしまいます。

今回は、多くの人が疑問も持たずに信じている試験対策の間違った風説について解説します。
ちなみにEは2011年に2回目の社労士試験で合格、その後社労士登録をして約2年の実務経験、という実績があります。

社労士試験対策にまつわる風説の罠

社労士試験の対策として、受験業界や受験生の間で風説となっているものがいくつかあります。
その中でも最も根強いと思われる間違った風説が「過去問」の取り組み方に関するものです。

当ブログの「社労士試験逆説勉強法」の中で再三言っていることですが「過去問」にこだわりすぎると勉強の効率が著しく悪くなります。

もちろん過去問はあらゆる試験にとって重要です。
なぜ重要か、理由がこれです。

・そもそもどういう出題形式で出されてどれくらいの量の問題が出るのか知る必要がある。

・複数年分の問題を解くことで出題傾向や各論点の出題頻度がつかめる。

・実際の試験と同じ環境を想定して問題を解くことで時間配分などの本番対策ができる。

このような理由からあらゆる試験で過去問に一度も触れずに本番の試験を受けるなどということは、特に一年に一回しかない社労士試験では、考えられません。

しかし、世の社労士受験生には「過去問は重要」という字面からか、このように受けとめてしまう人が多くいます。

とにかく過去問を何度も解き全てパーフェクトに解答できるようにしなければ

と。

Eの実際の体験から言います。
もし過去問を出題傾向に関係なくまんべんなく5年分以上の過去問を3回以上解くとするなら、3回目以降の作業はムダです!

Eは2回の試験勉強で過去問に取り組んだのは7年分の過去問を実際の試験問題順にそのまま載っている問題集で1回解いただけでした。
もし仕事や育児をしながら限られた時間で勉強している人なら5年分を1回解けば充分です

1回って、さすがに少なすぎではと思うかもしれませんが、大丈夫です。
重要な過去問って基本書や一問一答集など社労士教材のあらゆるところにちりばめられているので、いつの間にか同じ過去問を何度も勉強していたりするのは周知の事実です。

科目やテーマ別に構成されている問題集もありますが、Eは出題されたそのままの形の問題集を選びました。本番形式で解くことが可能だからです。
現在でも毎年改定版が刊行されるこの過去問題集でした。

※詳細は画像をクリックしてください。



Eはこの7年分の過去問題集をこのように使い分けていました。

①直近3~4年分は学習初期に、出題頻度や傾向を知るために解く
②5~7年前のものは直前期に、本番を想定した時間配分実力の確認のために解く

といった感じです。

実を言うと1年目の試験の時は、直前期までできるだけ固定記憶を増やすことで精いっぱいでした。
基本書の回転と横断学習が点を伸ばすのに一番効果があるという段階だったためアウトプットはほとんどできず、過去問も直近2年分を1回解いただけでした。
2年目にようやく固定記憶がそこそこ定着し、過去問7年分(各1回)の他に2種類の一問一答集、直前期に模擬試験問題集に取り組むことができたという状況でした。

では、なぜ3回以上過去問を解くことをムダと言い切るのか。
その理由の前にまず、社労士試験の過去問の特性の分析から入ります。

①過去の問題の完全な「焼き直し問題」は全体の2割くらいしかない
②過去の問題と同じ論点が出ても解答に必要なポイントが違う、つまり別の角度から問う問題が出るケースが多い
③数年に一度しか出ない論点や一度しか出たことのない出題頻度の低い論点の割合はかなり高い

受験生のみなさんは試験対策を通説任せにして、自分で実際に解いてその感触を元に自分で分析するということを怠っていませんか?

あくまでもEの実際の感触であって間違っている部分もあるかもですが、Eはこの感触を元に過去問への取り組みの方針を定めました。
その方針が、

過去問に何度も繰り返し解くほどの価値はない

ということです。
ではその理由です。

出題頻度を無視して過去問をまんべんなく解くと今年の試験に出る可能性の低い問題にも取り組むというムダな作業をすることになる。

習熟度を無視して同じ問題を何度も解くとはじめから回答がわかってしまっている問題も解くというムダな作業をすることになる。

③過去問には今年新たに出題される問題存在しない

なら、「アウトプットはどう取り組めばいいの?」という問題になりますよね。
Eがどうしていたか。
これです。

同じ論点を違う角度から問われても対応できるために、過去問以外の問題(問題集・一問一答集・模擬試験問題集など)をできるだけ多く解く

です。
もちろん問題を1回やってやり捨てではないです。
ひとつの問題集は1回やるごとに次のような印をつけて徐々に問題の数を絞って3回やりました。

「〇」 完全に理解していて(または出る可能性が低く)次回は飛ばしていい問題
「△」 正解していたけど理解不足で次回も取り組むべき問題
「✕」 不正解で次回も取り組まなければならない問題

この作業をすることによって問題集を一回転するごとに3~4割が「次回は飛ばしていい問題」のカテゴリーに分類され、ムダな作業をどんどん省き、次の新たな問題に取り組めるわけです。

と、ここでこう思う人もいることでしょう。
10年も前に合格しただけの辞めた社労士が今さら何を知ったようなことを言ってるんだ。
あれだけ多くの受験生や合格者がとにかく過去問は大事だと言っているし、Twitterでも毎日のように過去問をやったとつぶやいている受験生がいるではないか、と思うかもしれません。

それ、大間違いです。
社労士受験対策業界の最大手「資格の大原」もEと同じことを言っていました。

資格教育業界の事情

「資格の大原」という資格教育業界の中でも大手のHPに次のような記述があります。

-過去問と予想問題集の併用がおすすめ-
社労士試験では白書、時事問題などからも多く出題されます。このような問題は、最新の情報からしか得られないため、過去問だけを解いていても合格にはつながりません。

このような問題を克服するには、過去問と予想問題集の併用が効果的です。まさに勉強を始めるその年に出版された予想問題集と過去問題集を活用し、過去問では補いきれない要素を克服しましょう。

引用元:資格の大原HP 「社労士試験における過去問活用法とは?大原講師陣が解説」
https://www.o-hara.jp/course/sharoshi/sha_column_1

表現は若干違いますが、予想問題集(過去問以外の問題)が必須であること、過去問では補いきれない要素があること、など大筋でEの述べたことと似ています。

が、Eのように過去問は1回やればいいとまでは言っていませんよね。
資格の大原のHPでは「過去問と予想問題集の併用」つまり過去問も何度かは解くべきだと受け取れるようなことを述べています。
この部分、なぜEと資格教育業界の大原とでは違うのでしょうか?
理由があります。

・資格教育業界には「過去問」の教材を売りたいという意図がある。

・「過去問以外の問題」には作成の手間と費用がかかるが、「過去問」ならコピペに解説を加えるだけでいい。

要するに過去問題集は安く簡単に作れるからそっちを売りたい、という業界の事情があるからです。
とはいえ、自分のところの受験生が過去問ばかり何度も解いていたら受からない。
そこで、紹介したHPのような中間を取った言い方をしているというわけです。


Eの過去問についての考え方は、過去の記事で実際の問題を具体例として挙げて詳しく述べているのでぜひ読んでみてください。

多くの間違った風説

社労士受験対策の間違った風説の典型が「過去問」についてのものだったわけですが、実は他にも多くあります。
例えば、

「選択式の試験対策」が存在すると思っている

問題文に5か所の空欄を作って語群の中から選択して穴埋めをする、というのが社労士試験の二つの出題形式のうちの一つの「選択式試験」です。
この選択式試験の対策をするためにわざわざ選択式問題集と称して文章に5か所の空欄を設けた問題を解く、というのは死ぬほどムダな作業なので絶対にやめましょう。

冷静に考えれば誰でもわかると思いますが、問題を作る立場の人が広大な出題範囲のうちどの箇所を問題文として選び、どの5か所を空欄にするか、そのバリエーションは無限大です。

無限大に立ち向かうに、かろうじて選択式試験の対策と呼べるものはひとつです。
普段の基本書の回転という勉強の中で「ここが空欄だったら答えられるか」と意識して読む、くらいのものです。
択一式問題でも一つ一つの語句が正誤判断の要素になるわけですから、結局勉強の方法は択一式も選択式も共通です。

そういう意味で基本書の回転という作業は直前期の最後の最後まで続けるべき作業です。
もちろん直前期は出題頻度や習熟度に応じて範囲を絞る必要があります。それについても過去の記事で語っています。

ではなぜ、世に「選択式問題集」なるものが出回っているのか。
それはもちろん、受験生の不安につけ込んで教材を売ろうという業界の思惑に他なりません。

次に、

選択式の「労一」などの難問奇問に対策が存在すると思っている

社労士試験の大きな特徴として科目ごとに〇点以下なら即不合格(選択式は基本、5点中2点以下は不合格)という「足切り」という制度があります。
この制度によって不合格になる受験生は非常に多いと思われます。
その理由として、5つの空欄を埋める選択式試験に社労士試験についての参考書のどこにも載っていない通達やら白書やら資料からの文章が出されるからです。
要するにこれが難問奇問です。

特に毎年決まって難問奇問が出題されるのが「労務管理その他の労働に関する一般常識」(通称「労一」)であることは受験生なら誰もが知るところです。

そのため、全体の合計点では合格レベルに達することができる受験生は「難問奇問」を克服しようとする人がいます。やはり試験対策の業界が刊行する「労一対策」なる参考書を買ってきては通達やら白書やら資料を読み漁ろうとします。
ここでも受験生の不安は業界の利益に変わります。

そしてこれもまた、死ぬほどムダな作業です。
一つ一つの資料が出題される可能性は1%に遠く及びません。
しかもたまたま偶然出題される文章に行き当たったとしても、広く多くの資料を読み漁っただけで本番で正しい解答を選択できるほど記憶に残っているわけがありません。

ではどうするのか。
Eは一年目に初めて前年の選択式試験の過去問を解いてみた時にこう思いました。

なるほど、社労士試験って最終的にくじ引きなんだ

と。
社労士試験で労一などの足切りによって不合格になった人の中に、「実力がなかった、対策が足りなかった」と思う人も多いかと思います。
そういう人は残念ながら、目の前の現象から物事の本質(現実)を正しく認識する能力が足りていません。
現実は、「選択式試験の難問奇問を実力で克服する方法はない」です。
ではどうすればいいのか。
この二つです。

①社労士試験は実力がある人の中で運がよかった人が合格する、と割り切る
②選択式試験は時間に余裕があるから残りの時間で解答を徹底的に分析・検討する

ということだけです。
徹底的な分析・検討はある程度効果があります。実際Eは二回の試験で難問奇問は脳みそが蒸発するくらい考え抜いたおかげで全て3点以上でクリアしています。
が、ひねり出した解答ですが、それが正解だという確信など全くなし、ゼロでした。
つまりEの合格は(全ての合格者は)ただ運がよかっただけです。

間違った風説、最後にもうひとつ。

模擬試験を本番を想定して試験会場に受けに行った方がいい

模擬試験といえば5月くらいのちょうど今頃の時期、もはや試験勉強に1分1秒でも時間がほしいという時期以降に行われます。
模擬試験の会場が家からすぐ近くだったり、仕事や子育てをしているわけではなく1週間24時間いつでも勉強できるという人でもなければ、こんな時期にわざわざ移動時間を費やして模擬試験会場まで行って試験を受ける意味がありますか?
これ、死ぬほどとまでは言わないまでもかなりのムダです。

模擬試験問題は簡単に手に入りますから家で試験と同時間帯に同時間内で解いてみればいいわけです。
「本番を想定して」模擬試験会場に行ったとしても、本番の試験は全く違う場所で行われるでしょう。
意味ありません。

家では本番のように集中できない、という人もいるかもしれませんが、そういう人って普段の勉強も集中できていないってことですよね。
ちなみにEは、テレビもネットもベッドもある家では普段から集中して勉強できないタイプで、社労士試験の勉強は直前期以外はほぼ全て家の近くか通勤途中の図書館や喫茶店やファミレスでやっていました。
従って、模擬試験問題も図書館や喫茶店やファミレスでやりました。


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まとめ

冷静に考えれば誰でも間違っているとわかる風説をなぜ人は盲信するのか?
その理由として、人は他人と同じことをしていないと不安になる、という習性があるかと思います。

最近コロナ禍が落ち着いてきて夏も近づいてきました。
「いつまでマスクをするのか、屋外でもマスクをするべきか」という話題が社会を駆け巡っています。
えー屋外でマスク、必要ないですよね。
みんなわかっているからこそそういう議論になっているわけです。
でも現実にはほとんどの人がマスクをしている。
他人と同じことをしていないと不安だからです。

マスクなら感染は収まってきたとはいえ予防になるわけで害にはなりません。
しかし、1年に1回しかない資格試験で風説を盲信してムダな作業ばかりを積み上げていたとしたら…

今回指摘したような間違った風説に踊らされている受験生、まだ間に合います。
今からは本当にするべきことだけをしましょう。
試験まであと80日余りです。

今後も社労士試験に役立つ情報をお伝えしていきます。
次回をお楽しみに!

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