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【職歴紹介】司法書士兼土地家屋調査士の「補助者」のお仕事③ 測量と測量図面作成の仕事を覚える方法

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職歴紹介シリーズ、司法書士兼土地家屋調査士の補助者の仕事の続きです!
前回までは、事務所に就職したいきさつ、司法書士や土地家屋調査士がどんな仕事をしているか、などを紹介してきました。

今回は、土地家屋調査士の仕事のひとつ、測量にスポットを当てます。

測量って普通の人にはなじみのない仕事ですよね。
時々道端で何やら機械をのぞき込んでいる人がいるけど、一体何を見ているの?くらいに思っていませんか?
Eはそうでした。

フタを開けれ見るとそこは、精密な機器を扱い、数学の知識が必要とされる世界でした。
高校時代何度も0点を取り、高校なのに「代数幾何」の単位を落としたほど数学が苦手なEがそんな職場でやっていけたのでしょうか。

前回の記事です。

測量をイチから学ぶ

さて前回記事でも述べましたが、事務所の業務である不動産登記、その中でも土地家屋調査士が行う表示の登記には必ず必要な添付書類があります。
申請用の定型の用紙に次のような図面と図面に関する情報を記載しなければなりません。
それがこれです。

土地 ー 地積測量図
建物 ー 建物図面、各界平面図

え、こんなの全くの素人だったEにできるの?ですよね。
もちろん測量図面が必要となるのは登記に使う図面だけではありません。
登記申請に添付する地積測量図は非常にシンプルなものですが、その他にも土地の境界確認図などには構造物も記載したりとよりCADのテクニックが必要となります。

ただ、このうち建物に関する図面は比較的簡単に作れます。
そのための調査も、一般的な住宅程度なら建物の内外を目で見たり、巻き尺であちこち測ったりするだけで済む場合がほとんどです。
なぜでしょう?

建物の図面を作る

理由は、日本の建築物はほとんどが尺貫法をもとに建てられているからです。
つまり、家の各部の長さは「尺」、「間(けん)」を単位に決められています。
メートル法でいうとこうなります。

1間 = 1820mm
1尺  =  303mm (3尺 = 910mm

これ、要するに畳のへりの長い方が1間です。
実際、日本の住宅は〇畳などと畳の大きさを基準にしていますよね。
例えば住宅の襖や扉は1間の半分の 910mmのものがほとんどです。

このように日本中の住宅を同じ単位で統一することによって、どこでも共通の建材を使うことができます。
ホームセンターで部屋の扉を買ってくれば自分の家にもピッタリ、というわけです。

従って、プロにかかれば建物を外から見ただけで各辺の長さが推測できます。
巻き尺で実際に測って確認してOK、となります。

建物図面(各階平面図)サンプル 出典:盛岡地方法務局HP
http://houmukyoku.moj.go.jp/morioka/static/33zumen.html

こ、このサンプルは尺貫法で割り切れませんね…



上記のような図面は、事務所の測量図面用のCADを使えば現地調査の結果を元に作れてしまいます。
初期設定をしておけば定型の用紙の枠に合わせてバランスよく配置して印刷できます。

問題は土地に関する登記図面、そのための測量、です。

土地の測量をする

測量についてブログのいち記事だけで説明できるわけがないんで、死ぬほどざっくりと語ります。
興味がある人は文献やネットで時間をかけて調べてください。

まずは基本情報です。

※興味のない人は飛ばして、この後の測量図のあたりから読んでください。

・現在、不動産登記や公共の地図を作ったりするための正確な測量をするには高価な機械が必要になります。

・今日、測量結果は図面上に「座標値」として表しますが、どんなに精度の高い機械( トータルステーション やGPSなど)を使ったとしても、この世界に100%正しい測量結果(座標値)は存在しません

・より精度の高い測量結果を出すためには、温度や気圧などの気象条件や測量機械自体の誤差など様々な要素を補正して、複数回測定して平均を出す、など手間と時間が必要となります。

・(重要)土地家屋調査士の図面に要求される精度は、専門の測量会社が行う公共測量などに求められる精度に比べるとかなりゆるいです。

Eが働いていた事務所では、トータルステーションという一般的によく使われている機械で測量していました。
高額なだけあって超精密な機械です。

どれくらい精密かというと、Eが使っていた機械では角度を「720分の1度」まで読み取っていました。
このような機械です。


そして測量現場ではこの他にこのような道具を使います。


トータルステーションを設置する三脚


測量したい地点に立てるポールプリズム

※もし購入を検討、または値段が知りたい場合、詳細は画像をクリックしてください。



トータルステーション(以下、TS)は真ん中に照準付きの望遠鏡がついていて、上下左右に回転できるようになっています。
では、TS による測量を極力簡単に説明すると、

① TS を測量の基準となる点の真上に、三脚を使って水平に設置する。この地点の機械点名をA1とする。座標値をここでは ( X=0.000 Y=0.000)と定める。単位はメートル。

②始めに、ポールにプリズムを設置したものを基準となる点に垂直に置く。 TSの望遠鏡を覗き照準と基準点(A2の点とする)のプリズムを合わせる。
※この作業は機械を操作する人とプリズムを立てる人の二人一組で行う。

③ TS の測量スイッチを押すと、 TS から光が発せられてプリズムに当たって跳ね返ってくる。光の往復時間によって距離がわかる(すごい!)。これによって 機械点( A ) から基準点( A2 )までの距離がわかりTSに記録される。

④基準点に設置したプリズムはTSの望遠鏡から見て水平ではないため、水平位置から見たプリズムの位置の(微小な)角度を読み取り、A2の距離情報と共に記録される。

⑤上記の距離と角度の結果から 三角関数を使った計算により、A1からA2までの水平距離がわかる。この距離が地図上の距離となる。今回は距離10mだったとする。

⑥T1は偶然にも真北にあることがわかっていたとする。一般的に北は座標上でゼロから見て真上を指すので A2の座標値を ( X=0.000 Y=10.000)

⑦次に新たな点、A3の上にプリズムを設置しTSの測量スイッチを押す。
ここで機械点A1からA3の水平距離がわかるとともに、機械点を中心とした基準点 A2から A3角度がわかる。ここでは機械点からの距離が10m、角度が時計回りに90度ちょうどだったとする。

⑧上記の測量結果からA3の座標値がわかる。下の図のようにA3の座標値は ( X=10.000 Y=0.000) となる。

⑨TSの測量データをCADにインポートして図面上で A1ーA2ーA3を直線で結ぶと座標上に地図として土地の形状(仮に土地Eとする)を描くことができる。

 土地Eの測量図

計算上、というか直角二等辺三角形の長い辺の比率の語呂合わせ(一夜一夜に人見ごろ)を知っていれば、 A2ーA3 間の距離は 14.142mだということがわかります。
といった作業を経て、土地の測量図を作ることができます。

と、こういうことをするのが土地の測量です。
実際は非常に多くの点を測量するので計算は膨大になりますが、測量用のCADに計算機能があるし、近年はTSで測量すると同時に計算してモニター上に表示してくれるようです。

測量を学ぶ

さて、ここまで測量についての基礎知識を披露しましたが、Eはどうやって実務に堪えうるだけの知識を得たのでしょうか。

前任者からのレクチャ

まず、1日だけ前任者に教えてもらいました
Eが事務所に就職することになったのは、前任者が急病で働けなくなったからでした。
その前任者が少し回復したため、就職した最初の週に一度だけ出勤して先生と三人で測量現場へ

これまでの記事でも触れたように、先生は資格者でありながら現代の測量機器が全く扱えません
現場ではEが機械を操作し、先生が測量する地点にプリズムを立てていきます。

だた、各現場で測量に必要な地点を把握して次々にプリズムを立てる場所を移動していくのは実務に精通している先生、ということもあるから例え先生が機械が扱えたとしても、機械を操作するのはEであることに変わりありません。

ここで重要なのが就職したてのこの頃、機械操作について教えてもらえるのはこの前任者をおいて他にいない、ということでした。
その結果、盛りだくさんの一日となりました。

現場で、三脚の立て方からトータルステーションの操作方法、測量の手順、メモの取り方(現場の状況などを記したメモは重要)など測量の流れを一通り教えてもらいました。
事務所に帰ると、測量の考え方(前章で述べたような測量の基礎知識)やトータルステーションに保存されている測量記録をどうCADにインポートして、どう座標値を計算させるのか、測量用CADならではの操作方法、など図面作成の手順を教えてもらいました。

当たり前ですが、広範囲な知識を必要とする測量・製図が一日で理解しきれるはずがありません。
次の日からは完全に一人ですべての測量機械、CADの操作を何とかしなければなりません。

当然、悪戦苦闘の日々でした。
実は前任者に教えてもらったのは測量だけでなく、PCソフトを使った登記申請書の作成方法、役所への電子申請のやり方など、めちゃめちゃ詰め込みで教わるという始末でした。

幸いだったのがその後、前任者が再就職した職場がEの事務所の近くだったので、Eの業務の困りごとがたまると先生が前任者を呼んで報酬を支払ってEが教えてもらう、ということが二、三度ありました。

この結果的にメンター制のようなシステムによってだいぶ助かっていました。

測量用機器メーカーのサポート

測量用の機器って高額です。
その事務所はトータルステーションをリースしていたようでしたが購入すると100万円はします。

一般的にCADも高額です。
しかも測量用CADというニッチな製品はさらに値が張るようです。

そのためか、メーカーからのサポートがあります。
各メーカーの営業担当が時々事務所を訪問するので、その時Eは質問攻めにします。

特にCADは、座標計算が上手くできなかったりと初心者のEにはトラブル続出でした。もともと事務所が月に何回か電話で質問できるというサポートに入っていたので、それもフルに活用しました。
そういったサポートを受けることで測量の知識自体もついていきました。

「測量士補」の資格勉強

測量現場での手順、機械の操作方法、CADの操作方法、製図の方法、と各論は実際に経験を積みながら覚えていきましたが、測量の基礎的な考え方や一般的な決まりごとはどう覚えたのか。

これも前任者の勧めで(彼は土地家屋調査士試験の合格者)、測量士補のテキストで勉強しました。
測量士補は、ゆくゆくは難関試験である測量士を目指すための入門編のような試験です。
もちろん、当時社会保険労務士試験の勉強に取り組んでいたEは実際に測量士補の試験を受ける気は全くありませんでした。

※詳細は画像をクリックしてください。


が、完全初心者だったEにとって測量士補のテキストを読むことで、今現在現場やCAD画面の前で操作していることの根幹の仕組みはどうなっていてどうつながっているのか、がわかってきました。
テキストにある試験用の問題ももちろん解いてみました。

Eのポテンシャルは?

冒頭で述べたように、Eは高校時代0点を何度も取るほど数学が苦手でした。
数学が苦手になり出したのは中学生の頃からで、定期テストで80点以上を取れたのは中学で1回、高校で1回だけでした。
その80点以上を取った2回のテストの内容というのが、

中学 ⇒ 図形の証明
高校 ⇒ 三角関数

でした。

つまり「数字がなくて図形だけ」だったり「図形と数字が関係している」場合には、かなりいい点が取れていたわけです。
なぜそうなったかはさっぱりわかりません。それがEの脳の構造だからとしか言えません。

ということは、Eは数学が超苦手でありながら三角関数を多用する、逆に言えば使う数学の知識といえば三角関数くらいしかない測量を理解する素養はあったわけです。

そのせいか、
EはCADの操作も得意な方でした。
最初に習ったのは、この司法書士兼土地家屋調査士の事務所に就職する前、ポリテクセンターの職業訓練での機械製図のCADの授業でした。

入所当時、CADは全くの初心者でしたがCADの覚えはよくて、30人ほどの授業で機械製図の課題を渡されるとたいていクラスにひとりいたCAD経験者の次に作り終わっていました。

Eはこの数年後に、社労士の資格を取って会計事務所に就職し税務会計業務の難しさに苦しむことになるんですが、むしろ会計よりも測量・製図の素養の方があったのかもしれません。

それなら土地家屋調査士の資格を取ればよかったかというと、話はそう簡単ではありません。
もちろん事務所で働きながら、土地家屋調査士を目指すのはどうかと考えたことはあります。
が、いくつかの理由でメリットはないと判断しました。

・高額な測量機器やCADが必要なため、独立開業するためには初期投資が大きすぎる
・司法書士兼土地家屋調査士の先生をみてわかる通り、司法書士の資格のない土地家屋調査士はありつける仕事が限られる
・そして司法書士の資格を取るのは至難の業
・地元を20年近く離れていて地縁の薄いEには先生のようには顧客獲得が困難

などです。
ま、結果的に社労士としても諸々の理由で独立開業もできずに終わったわけですが。


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まとめ

と、かなりの専門知識を必要とする測量業務ですが、Eは比較的順調にスキルを上げていくことができました。
先生には当初から、社労士の資格を取ったら辞める、と伝えてありましたが2年目で合格したことを先生に伝えると、若干残念そうな顔をしていたような気が。

次回は司法書士の業務、登記申請書の作成や電子申請の仕事、民法や登記に関する法律の知識などについて語ります。
次回をお楽しみに!

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