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【職歴紹介】会計事務所のお仕事② 税務会計編 実務初心者の壁

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お待たせしました。
Eの職歴紹介シリーズ第二弾!

会計事務所に勤務していた頃の業務、前回の【社会保険労務士編】に続く【税務会計編】です。

会計事務所なんだから税務会計って当たり前じゃないかと思うかもしれません。
が、Eは社会保険労務士の資格を取り、将来の独立開業のため、実務経験を積むために転職したわけです。

それがどういうわけか入社すると「社労士はいらない」と言われ最初に配属されたのが、事務所の大多数の職員と同じ税務会計の部署
簿記2級を取っただけで実務経験ゼロのEが、いきなり担当の関与先を持たされて一体どうなったのか。

今回はEが会計事務所でやっていた税務会計の業務について語ります。

(注)Eは社会保険労務士関連の知識と比べて、圧倒的に広範な知見を必要とする税務会計については知識が乏しいので、今回の記事は「会計の実務について詳しく知りたい」という人には、たぶんあまり参考になりません。
「会計実務初心者はこういった苦労をするかも」という経験談として読んでもらえればと思います。

前回の記事「社会保険労務士編」です。

税務会計に配属

入社早々「社労士はいらない」と言われて税務会計の部署に配属されました。
その会計事務所は20人ほどの会計職員がいて、3~4人のチームに分かれ、それぞれリーダーがいて、Eはそのうちの一つに振り分けられたんですが、そのリーダーが最悪でした。

担当の関与先を与えられる前の研修期間を含め、数々の業務に重大な支障がでるほどの妨害を受けたんですが、まあこのパワハラには今回深くは触れません。

それを抜きにしても、簿記二級の資格を取っただけの初心者にとって実務の壁は結構厚いものでした。
「簿記二級」レベルの初心者には、実務に必要な次のような知識が不足しています。

税法(さしあたって所得税法、消費税法
会計ソフトの操作
・個人事業主の事業主勘定

こういった会計職員初心者に必要な基本的知識を解説している良書は、当時のEはそれはもう探しつくしたんですが、ありませんでした。

となると、やはり現場で教えてもらうしかありません。
ところがリーダーはとにかく「自分で勉強しろ」と。

担当の関与先を持つ前の研修期間にも、リーダーや他の先輩の関与先訪問に同行させてもらうも、黙々と作業している風景を見せられるだけで、何をやっているのか解説してくれるわけではなし。
やがて自分の担当を持たされると、ほとんどぶっつけ本番で一人関与先を訪問することになるのでした。

そんなわけで入社当初は、社労士業務にはノータッチ
約1年、税務会計の仕事を続けざるを得ませんでした。

こんな最低限必要な知識も得られない環境で、Eはどう切り抜けていったんでしょうか。
というか、切り抜けられてはいませんでした。


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税法の知識は必須です

会計をすることの大きな目的の一つは税務申告です。
日々の記帳も、財務諸表の作成税務申告書の作成も税法に基づいて行わなければ意味がありません。
一例を挙げると、会計初心者であっても最低限こんな知識が必要でした。

・消費税の課税区分
少額減価償却資産の特例(経費か資産かの判断に必要)

などです。
これについて解説します。

前提として、Eが最初に担当した10件ほどの関与先は全てが個人事業主(法人ではない)です。
つまり、確定申告によって所得税を納税する個人の顧客ということになります。
ここでは、個人事業主に限定して話を進めます。

消費税の知識

簿記二級に合格しただけでは実務に追いついていないもののひとつに、消費税についての知識があります。

そもそも消費税は全ての事業者に課税されるわけではありません。
細かい注釈はバッサリ省きますが、前々年の課税売上が1,000万円を超えていなければ消費税は納めなくてもいいんです。
お客さんから消費税を受け取っていても、です。

そして、「前々年」の課税売上によって課税事業者になるかどうかが決まるわけですから、「前々年」が存在しない開業して二年目までの事業主も消費税を納めなくていいんです。

こういう知識、素人で知っている人は少ないですよね。
Eもそうでした。

そして、消費税は取引の内容によって課税されないものがあります。

消費税の「非課税」「不課税」

厄介なのが、消費税がかからない取引にも種類があることです。
同じ「消費税がかからない」というだけの取引に「非課税」「不課税」「免税」
とがあります。

実際の現場では「非課税」と「不課税」の取引が関わってくるんですが(「免税」は主に外国との取引)違いはこのようになっています。

「非課税」…… 社会政策的な配慮で課税の対象にしないもの。
(例)土地の取引、借地、株式など有価証券の取引、医療費、市町村が販売するごみ袋、など

「不課税」……消費税法が定義する「消費」に該当しないもの。
(例)給与・賃金、寄付金・見舞金・祝い金、保険金、など

この区別は、関与先の会計担当者が会計ソフトに記帳した仕訳をチェックする時に必須の知識です。
「非課税」か「不課税」かは、扱いはほぼ同じなのに区別しなければなりません。

そしてEが担当する美容院や書店の店主、アパートの家賃収入があるおじいちゃん、といった零細企業の会計担当者は事業主自身であったり、事業主の奥さんであったりする場合がほとんどです。

そういった人たちは、会計実務初心者のEに輪をかけて簿記の知識も会計ソフトの操作の知識も乏しいです。
だからつまり、

会計担当者がつけた帳簿は間違いだらけなんです。

この「非課税」と「不課税」の区別が現場で何度も「どっちだったけ?」となりテンパったものでした。

経費と資産、どっち?

事業をやっていると、いろいろなものを買うわけです。
簿記を学んだ人なら当然の知識として、物を買って仕訳をするとき「経費」にするか「資産」にするかの判断が必要になります。

これが意外と複雑で、会計初心者にはどちらか悩むような買い物もあったりします。
それは税法上、中小企業者にはある特例があるからです。

少額減価償却資産の特例

この資産か経費かの判断をするのに「少額減価償却資産の特例」という制度があります。
中小企業者は30万円未満の資産は金額によって、消耗品費として経費に計上できたり、3年の減価償却にできたりします(月で按分でなく年で按分します)。
もちろん普通に定額法や定率法による減価償却も選べます。

実務未経験者なら、もう複雑でわけわからなくなっているんじゃないでしょうか。
Eも始めはわけわからなかったんです~

そもそも資産にするのと経費にするのと、一体何が違うんだ、資産にしたところで減価償却で最終的には全部経費になるじゃないか、と思いませんか?(Eは今でもそう思っています)

例えば店に20万円ほどでエアコンを取り付けたとします。

納税額、という観点から見ると事業主は、経費として全額を損金にした方が利益額が減って(その年の)納税額が減ります
減価償却するにしても、耐用年数は短い方が(その年の)納税額が減ります。

減価償却費は経費ですから、長い目で見ればいずれは全額経費になるけど、世の中何が起こるかわかりません
突然のパンデミックで倒産するとも限らないから早めに経費にして節税してしまいたい、といったところでしょう。
会計担当者の行動として一般的には、事業主が直近で最大限節税できる方策を取るべきのようです。

そんなわけで、この「少額減価償却資産の特例」、必須の知識なのでした。

会計ソフトの操作

簿記検定って100%手書きですよね。
でも実務では100%会計ソフトを使います。

たとえ関与先の経理担当者が全て手書きで作業を行っても会計事務所側で会計ソフトに起こします。
Eがいた会計事務所も、全く簿記ができない顧客向けに売上帳や領収書を預かって事務員が会計ソフトで帳簿を起こす、というサービスもやっていました。

会計ソフトを使わないと財務諸表や税務申告書を作るのがものすごく煩雑だからです。

Eが担当した関与先は、超小規模な零細企業ばかりでしたが、それでもいくつか会計ソフトを使っている事業主がありました。
そうなると、会計ソフトの操作を覚えなければなりません。

世に会計ソフトは数百種類も出回っています。
とはいえ、基本的な機能はそうそう違いませんから会計初心者でもとりあえず一種類覚えればなんとか応用が利きます。

最近は無料でダウンロードできる会計ソフトもありますから、事前に操作を覚えておくこともできます。

  最近セブでリモート起業したEはこの無料会計ソフト「フリーウェイ経理」を使っています。

研修期間中に事務所のパソコンで操作を覚えておきたい、と思うのが普通です。
が、例のリーダーにことごとく阻止されます。
「勤務時間中に勉強する時間の分の給料は払えない」と謎の理由をつけられて会計ソフトをいじらせてもらえません。

リーダーの数々の妨害行為の言い分は、どうやら社労士資格を持って入社したEの給料が他の一般職員より高いから、ということが理由のようでした。
彼が経営者でもない以上矛盾しかありませんが、とにかくEとしては力関係上なすすべがありません。

関与先に同行した時に、横で操作を見て覚えるしかありませんが、そんなことで現場で通用するわけがありません。
結局、操作を覚える場=関与先に訪問した時、になってしましました。

それはそうとして財務諸表のひとつである損益計算書ですが、製造業の場合は損益計算書の中の製造原価(直接製造に使われる原材料や光熱費、人件費などの費用)を別に「製造原価報告書」という補足資料として作成する場合が多いです。

そのために会計ソフト上では、同じ人件費でも、製造現場以外の業務を行う例えば、人事や経理の従業員の賃金と(間接費といいます)、直接製造にかかわる業務をする従業員の賃金(直接費)とを分けて仕訳をします。

人事や経理の従業員の人件費 → 「賃金給与1」(=販売及び一般管理費)
製造現場で働く従業員の人件費→「賃金給与2」(=製造原価)

などと科目の名前を区別して仕訳するわけですが、同様に製造原価と一般管理費とを分ける必要のある科目ははその他にも「光熱費」「通信費」「保険料」「消耗品費」「減価償却費」とたくさんあります。

ここまで理解できた人なら、これを知らなければ現場で大変なことになるということが想像できるでしょう。

幸いEの担当に製造業はありませんでした。
が、このことを知らないまま確定申告の時期に、他の会計担当者の関与先の決算整理仕訳を手伝っていてパニックになりました。
「同じ名前の科目がなぜいくつもあるの?」という状態です。

これまた誰が教えてくれるわけでなく、その時々で覚えていくしかなかったのでした。

個人事業主の事業主勘定

まず、「個人事業主」というものについて説明します。

税務会計において「個人事業主」であるか「法人」であるかは決定的に会計処理が異なります。

「個人事業主」は所得税を納め、「法人」は法人税を納めます。
会計期間税率も根本的に異なります。
そして、所得税は事業で得た所得にだけ課税されるわけではあるわけではありません

給与所得がある会社員も納めるし、土地を売った人、家賃収入がある人、年金をもらっている人、投資で儲けた利益、など様々な所得について申告します。
一方、法人税は法務局に法人登記をした法人が、法人としての活動で得た利益(または損失)を申告します。

ちなみにEは司法書士の事務所で補助者として働いたこともあるので、法人登記の実務についても知識があります。
この経歴はEがその会計事務所に採用された理由のひとつでもありました。

例えば、立派な店舗を構えて従業員を何十人も雇っている「店」があったとしても、それが「会社」とは限りません。
法人として登記していれば「会社」が経営している店ですが、個人事業主として青色申告をしているだけならただの「店」です。

法人登記するかどうかはいろいろなメリット・デメリットがあるので事業主の選択次第ですが、一般的に売上や利益が大きくなってくると納税額や様々な面で、法人設立をした方がメリットがあります。

法人を設立する時には、出資者から出資金を集めて、資本金などという形で事業を行う資金にします。
会社の資産は社長など経営者個人とは完全に区別されています。社長が勝手に会社のお金を拝借してラーメンを食べに行く、ということはできません。

それをするなら「役員貸付金」という勘定科目を使って会計処理しなければなりません。
税法上、役員貸付金には利息を計上しなければなりません。

個人事業主は本来こんな区別はありません。
自分の店で商売して利益が上がれば、自分の財布に入るだけですから、そこからラーメン代を支払おうと、同じ財布からの出し入れに過ぎません。

ただし、事業をしていて「青色申告」をした場合は、事業用の財布を別に持たなければなりません。

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青色申告って何?

「青色申告」をざっくり言うと、個人事業主複式簿記を使って正しく税務申告することで、様々なメリットを受けられる制度です。

特に大きなメリットが「青色申告特別控除」という、所得から65万円が控除される制度で、かなりの節税になります。
その他、例えば奥さんが店の手伝いをしてれば、「専従者」として給料を払うという形の経費処理ができ、利益額を減らし節税できます。

仮にも会計事務所に会計処理を依頼してくる事業主には、必ず青色申告を勧めます。
事業主としてもせっかく会計事務所に報酬を支払って複式簿記で会計処理をしてもらう以上、青色申告しないという選択肢はありません。

そして、
個人事業主の会計処理には、簿記二級の試験には出ない「事業主勘定」と呼ばれる勘定科目が使われます。

事業主勘定って何?

青色申告をするために求められるのが、法人と同じように事業用の財布を明確に区別することです。

簡単な方法は、事業用の金庫と預金通帳を用意して、事業主の貯金の一部をそこに入れて、店の仕入れや備品の購入はそこから払い、売上はそこに入れるようにすればいいわけです。
これって何かに似ていませんか?

そう、「資本金」と似ていますよね。
個人事業主の会計処理では「元入金」という勘定科目がそれに当たります。

社長が法人のお金を拝借すると勘定科目は法人だと「役員貸付金」でしたが、個人事業主の場合は「事業主貸」といいます。
社長と会社は別人格ですから利息が発生しますが、個人事業主にはもちろん利息はありません。

逆に、社長が事業の資金を自分の懐から出したりすると「役員借入金」という勘定科目ですが、個人事業主は「事業主借」です。

だから、例えば事業用に作った店の名前の通帳から事業主の国民年金の保険料が引き落とされれば、事業とは関係ない個人の支出ですから「事業主貸」として処理します。

ちなみに、資産や経費も個人と事業で区別されます。
自宅の一部が店舗だった場合、例えば店舗の面積が自宅の30%だとすると、固定資産税を払った時に、払った額の30%は事業の経費「租税公課」として処理できます。

と、こういった個人事業主の事業主勘定についての知識は簿記二級の試験には一切出てきません。世に出回っているテキストにもありません。


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感想(1件)

完全ではないものの、簿記二級は実務に直結する知識が満載です。



もちろん、ネットで調べれば数多くのサイトで解説しています。
が、その存在を知らなければ、そもそも検索するという行動に移しさえしません。

それがEでした。
全てがこんな調子だったんですが、現場で実際の仕訳日記帳を見て、そこから学ぶ、という状態でした。


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感想(0件)

こういった本もありますが、イマイチ痒い所に手が届かないというか…



こうして新しい情報に触れると、仕事が終わった後に決まって夜遅くまで営業している蔦谷書店に駆け込んで、参考書籍を買ったりネットで調べたりして次回の仕事に備えるのでした。
その次回がまさに翌日で、朝方まで勉強して出勤、ということも何度もありました。

まとめ

会計事務所に就職して、いきなり社労士はいらないと言われて税務会計の部署に配属、といういきさつもあり、税理士実務の準備はほとんどできていませんでした。

当時、税理士試験の科目合格を目指して「簿記論」の勉強をしてはいましたが、どちらかというと学術的な内容なので、今回挙げたような実務の知識が得られるものではありませんでした。

とはいえ、Eのように零細企業ばかりの関与先なら、今回の記事で挙げたような簿記二級プラスアルファの知識さえあれば、全然難しくはありません。

事務所に新人をフォローする体制があれば解決する話なんですが、当時のEのような40代半ばの実務未経験者でも採用するような人の入れ替わりが激しい会計事務所では、そうでないケースも多いでしょう。
結局Eは、社労士部門に異動になって税務会計から解放されるまでの約一年、中途半端な知識のまま業務を続け、苦労することになるのでした。

会計の道に飛び込んで最初にぶち当たる壁、「簿記二級との差」で挫折しないように、Eの体験を参考にしてもらえればと思います。

今後も経営コンサル関連業務など、Eが会計事務所で経験した仕事についてシリーズで語っていきます。
次回をお楽しみに!

最近、フォーサイト社ではバーチャル講師も社労士試験の授業をしているようです。
楽しく勉強できそうですよね。

社会保険労務士

Eはこの、加藤講師の講座で勉強し、合格しました。



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