お待たせしました、Eの20年前のアジア放浪旅行の続きです!
タイ、バンコクを後にして北上。
バンコクではゲストハウスで出会った各国の旅人と(ほぼ日本人ですが)わいわいと過ごしていたものの、アユタヤではのんびり観光しながら読書にも没頭、と様相が変化したタイ北上の旅。
今回はアユタヤからさらに北上、同じく遺跡の街スコータイ。やはり毎日のように読書していました。
そんなEの旅の様子、出会った現地の青年、そしてその当時現地で読んだ最高の小説を紹介します。
前回の記事です。
スコータイに到着
タイ最古の王朝の都だったというスコータイにバスで到着。
今度は結構長距離なんで、鉄道に乗って車内放送が全く聞き取れず、スコータイの駅で降り逃すというリスクを避け、スコータイが終点のバスに乗りました。
これまた夜遅く着いてバスターミナルからバイクタクシーで宿がある街にたどり着く。というかその中のある宿の前にたどり着く。
夜遅くて宿探しが面倒だしそう高くなかったからそのゲストハウスにチェックイン。
きっとEを連れてきたバイクタクシーのおばさんは、その宿からのバックマージンを受け取っていたことでしょう。
おばさん、大成功でした。
その古びた宿もドミトリーなどなくシングルルーム。
しかも他に泊り客がいる様子もなく、ここでも旅人には出会えず。
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スコータイ遺跡観光
翌日街から20kmほど離れたスコータイ朝の遺跡観光、【スコータイ歴史公園】に出発。
フィリピンのジプニーみたいなトラックの後ろの乗り合いバス、ソンテウ(ついつい比喩がフィリピンのE…)に乗って遺跡群へ。
池に浮かぶ遺跡群 撮影:E
アユタヤのいかにも「ビルマ軍に徹底的に破壊された」という遺跡に比べると、きれいな遺跡の数々。
なるほどスコータイ王朝は13世紀(平安時代末期)には繁栄を誇っていたんですが、その後は先細りで最後は15世紀中頃(室町時代末期)南で隆盛したアユタヤ王朝に吸収されたという。
だからアユタヤの遺跡は見るからに廃墟で、スコータイの遺跡はまるで庭園のようにきれいなんでしょうか。
この二つの王朝の遺跡を見てEがひとつ思うことは、どちらの王朝も当時の人口密度は低かっただろうな~、ということです。
現存する街を見ても、街を一歩離れたのんびりした風景を見ても、人や家が少ないです。
そんなスコータイ遺跡ではあるんですが、Eはタイでの三都市目にして既に遺跡や寺に飽きがきていました。
タイ王朝の歴史なども「地球の歩き方」の後ろの参考資料で読んだりしますが、日本人にとってメジャーな(当然ですが)日本や中国などの歴史に比べると、情景が浮かんできません。
ここで、タイの中世~近世の歴史をざっくりまとめてみました。
13世紀 タイ族は、現カンボジアのクメール人によるアンコール王朝の支配下だった。
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クメール人を追い出してスコータイに王朝を作った。スコータイ朝はタイ族最初の王朝
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その後、結構繁栄した
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14世紀 南にアユタヤ王朝ができた
スコータイ朝ははじめはアユタヤに朝貢していたけど吸収されて消滅
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アユタヤは結構長いこと繁栄するがビルマとの攻防が始ま
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1767年(江戸時代中期)ビルマ軍によりアユタヤ陥落、アユタヤの街は徹底的に破壊される
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その後アユタヤを奪還したけど、アユタヤの街はボロボロの廃墟だったんで放置
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タークシン王が今のバンコク近く(チャオプラヤー川の西)にトンブリー王朝を作る
いや~、諸行無常ですね~
と、これだけ知っておけばアユタヤ、スコータイの観光は充分楽しめます。
遺跡というより、遺跡をモチーフにした庭園のようなスコータイ遺跡を2時間足らずで後にして、ヒマだったのと運動不足だったんで20kmほど離れた宿のある街まで歩いて帰りました。
しかもサンダルで。
まるで庭園のようなスコータイ遺跡
Peter GrosseによるPixabayからの画像
旅で出会った青年、トニー
と、その帰り道、宿にもうすぐ着こうかというところで一人のタイ人の若者に話しかけられました。
色黒で背が160cmあるかどうかくらいの小柄、まだタイ人の年齢を外見から推測できるほどの知見がないEには「若い」ことぐらいしかわからない青年はトニーと名乗りました。
「どこから来た?」と聞かれ、日本からと。
すると彼は開口一番「今夜一緒に食事はどうか?」と。
初対面で、しかも遺跡の街の道端で食事に誘われ、いかにも怪しかったけどEは承諾しました。
とにかくアユタヤ以降の旅では孤独で、誰かと話したくて。
というわけで夕方に街角で待ち合わせることに。
何か物を売りつけるのが目的?拉致される?
など悪いことが起きた場合のシミュレーションなどをしつつ待ち合わせ場所に行くと、トニーが車で迎えに来る。
20年前の当時からしても古いタイプの黒のセダンに乗り込むと、トニーおススメの店へ。
トニーの運転はというと結構荒くて、駐車するために反対車線を結構な距離走ったりする。
カーステレオからはトニーのお気に入りという宇多田ヒカルの " Traveling " が流れている。
宇多田ヒカルは当時Eもよくカラオケで歌っていた。タイの遺跡の街でも聴いている人がいたとは、と感心する。
10分ほど走って着いたレストランの屋台式で屋根のない席に着く。
トニーが注文したのはタイスキでした。
しかもバンコクで何度か食べたこういう形の鍋ではなく、
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日本では「ジンギスカン鍋」と呼ばれているこういうタイプの鍋でした。
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Eはこの時まで、というか今に至るまで日本でジンギスカン鍋というものを食べたことがありませんでした。
この真ん中で肉を焼きながら周りにスープを入れて煮込みにも使えるこの形の鍋を見て、なんと画期的なんだ、タイってすごい、と感動していたのでした。
さて、Eをこのタイスキ食堂に連れてきたトニーですが話を聞くと、ごく普通のタイの青年でした。
年齢はEより5歳ほど下。
つい最近までシンガポールでビジネスをしていた(なんのビジネスだったかは忘れた)。
日本の音楽が好き。日本に行きたい。
だからEを見つけて声をかけた?
彼女は今いない。
日本人女性が好き。
今スコータイで何をやっているのかを聞くと口を濁す。
など、平均的タイ人青年というものを知ることができました。
二人で大いに食べてビールを(Eは)飲んでEがおごり、帰りもトニーに車で街まで送ってもらいました。
何しろ、この時点まで(この後もそうでしたが)現地タイ人とほとんど交流していませんでしたから。
ホントにトニーよく声をかけてくれた。
長いこと話し相手がいなかったし。
20kmの道のりでひざの裏の腱が痛くなったけど、歩いた甲斐があった、と感謝したものでした。
とはいえ、彼はもちろん悪人でもなんでもなく、ごくごく普通の若者なので、その後何度かメールのやり取りをしたもののトニーとはそれっきりとなったのでした。
スコータイで読書
この頃読んだ本の一つに最高に面白い1冊がありました。
バンコクを出る前にカオサンロードの古本屋で買ったボロボロの文庫本でした。
イギリスの作家ブライアン・フリーマントルの『再び消されかけた男』という小説です。
これはEが放浪の旅の後にBook off で買いなおした実物です。
スパイ小説【チャーリー・マフィンシリーズ】
本の表紙にもありますが、この小説は「チャーリーマフィン シリーズ」の第2作です。
第一作は1977年、米ソ冷戦の真っ只中にイギリスで発表されたエスピオナージ(スパイ小説)でした。
物語の主役、チャーリー・マフィンは風貌はさえない英国情報部員。
実体は腕利きのスパイであるチャーリーはなぜか敵(ソ連のスパイ組織KGBなど)や味方(イギリス情報組織MI5)から命を狙われたりと、荒れ狂う国際情勢と組織の中で厳しい生存競争にさらされます。
実はEは大学時代にこの小説の第一作を読んだことがあり、それもあってカオサンロードの中ほど、狭い店内の両壁に山のような古本が積み上げられ古びた紙の匂いで噎せんばかりの古本屋で、その『再び消されかけた男』を数十バーツで買いました。
第一作から40年以上が経ち、著者のフリーマントル氏は齢80を超えた今も存命ですが、ここのところ著作活動はしていないようです。
チャーリーマフィンシリーズは16作を数えますがいまだに完結していません。
Eが漫画『ゴルゴ13』と同様に、物語の完結前に亡くなることを懸念している著者の一人です。
まあ、007シリーズのように他の作者が著作を引き継いでいくという例もありますが。
『ゴルゴ13』との共通点のひとつに、作品が何十年も続いているのに主人公は一体何歳?という長期に渡る大作「あるある」もあります。
ぜひ、この第一作から読んでもらいたいです。
※詳細は画像をクリックしてください。
第二作『再び消されかけた男』
さて、Eがスコータイ遺跡の街で読んだこの本『再び消されかけた男』の紹介です。
第一作で、自分を狙う組織に一杯食わせたものの、地下に潜って逃亡生活を余儀なくされていたチャーリーはあることがきっかけで、再び強大な組織を敵に回しての戦いに身を投じる、というもの。
このシリーズの魅力はなんといってもチャーリーを通して、プロのスパイ技術、駆け引き、策略、推理の数々が詳細に描かれているところにあります。
チャーリーのキャラですが、彼を他の作品の登場人物に例えるとまさに『半沢直樹』です。
組織での内部闘争に外敵との死闘。
敵への容赦のない爽快な「倍返し!」、いや「100倍返し!」。
で、外見のわりに女性にモテるし(半沢はなぜかこれがないですが)人情家。
ドラマ『半沢直樹』を見た時、Eは「チャーリーマフィンシリーズが原案か?」と思ったくらいでした。
『半沢直樹』はEも1作、2作とも夢中で見ていましたが、このシリーズはスパイというスリリングな舞台設定もあいまって、あの『半沢直樹』の興奮をも上回ります。
おススメです!
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まとめ
旅先で読んだ古本は、さすがに長旅の間持ち歩くわけにはいきませんから、人にあげたりゲストハウスの書棚に寄付したり(それと引き換えに失敬したり)古本屋に再売却したりしました。
その中で旅を終えた後に再度入手して読んだ本もいくつかあり、その中の一冊が今回の『再び消されかけた男』です。
チャーリーマフィンシリーズに関しては全て読んでいます。
思えば、あのカオサンの古本屋で、洋書に比べて圧倒的に少ない日本語の本の中で、他にどうにも読みたい本がなく、昔読んで馴染みがあったからという理由で、普通に日本の書店に行っていればまず手に取ることはなかった本をきっかけに、その後も長きに渡って同じシリーズを読み続け、楽しめたわけでした。
旅での本との出会いに感謝!
そして、スコータイでの等身大のタイ青年との出会いにも感謝!
この後もタイをさらに北上、チェンマイを訪れます。
次回をお楽しみに!