私Eは日本語教師として台湾に移住して約3年間住んでいたことがあります。
そして台湾在住の3年、帰国後の数年、Eは中国語を勉強し、日常会話ならほぼ問題なく話せるようになりました。
勉強の目的は単純に台湾や中国の友人たちとの交流でしたが、その後、転職活動や仕事で役に立つ場面もありました。
外国語といえば当然、英語ほど全てにおいて有益な言語はありません。
が、日本人にとって英語って習得が難しいと思いませんか?
Eのこれまでの総学習時間は英語の方が圧倒的に多いです。
が、(どちらも使わない期間が発生するのであくまでもピーク期の比較では)中国語の方がはるかに上手く話せます。
理由は、どう考えても日本人にとって中国語の方が習得しやすいからです。
なにかしら外国語を学ぼうと思っている人に対して、Eは中国語を強くススメています。
中国が超大国化して、現在もさらに発展を続けている国際情勢の中で、これまでの何倍も中国語が有用性を増していくことが予想されるからでもあります。
今回はそのあたりを解説します。
Eの中国語の実力
Eの中国語学習歴と、ピーク時の実力(かれこれ5年間ほとんど使っていません)を簡単に紹介します。
中国語の勉強を始めたのは、台湾移住の1か月ほど前からでした。
書店で入門テキストを買って独学で始め、台中市に移住してからは地元の中国語教室に週3時間通い、学校支給のテキストの2冊目の中級編が終わるまでの約2年間そこで勉強しました。
その後はあらゆる実践、会話、テレビ、音楽、小説と、仕事での日本語の講義以外の生活のすべての場面で中国語に触れ合う生活でした。
とはいえ、大人になってから外国語の勉強を始めてペラペラになるのは至難の業です。
30代で勉強を始めたEの中国語もペラペラというには程度おいです。
しかも、中国語自体の特徴でもあるんですが、Eの発音が通じる人と通じない人、Eが発音を聞き取れる人と聞き取れない人がはっきり分かれます。
台湾で勉強を始めたせいで、Eの中国語は発音も語彙も台湾訛りの強い影響を受けています。
そのため友人たちとの日常会話は、相手が台湾人や中国の南方の発音をする人となら問題なくできるようになりました。
ごく他愛のない日常会話なら、はたから見ればペラペラに見えているかもしれません。
外国語の聴き取りができない場合の典型として、会話に知らない単語が混じると相手の内容を瞬時に理解できずにタイムラグが発生し、さらに知らない単語が2つ3つ重なると完全に置いて行かれる、といった現象があります。
人の名前や数字が混じるだけでも微妙にタイムラグが発生したりします。
そのため、Eの中国語はビジネスシーンなどで通用するほどではありません。
ビジネスの場では正確な聞き取りが必要になるし、聞き取れないからと言って何度も聞き返したり、聞き流したりということも難しいからです。
ちなみに、正統の北京発音は半分も聴き取れません。
広い中国では、発音の特徴は地域によって大きく異なります。
帰国後も何度も台湾、中国、香港を訪れて友人たちとの交流を続け、地元の外国人イベントやSNSを通じてさらに中国語圏の交友範囲を広げていきました。
帰国後の数年は中国語を使わない日がほとんどない状態で、Eの中国語の実力は大きく進歩とまではいかないもののほんの5年ほど前までは衰えることはありませんでした。
このようにEの人生に影響を与え、豊かにしてくれた中国語とはどんな言語なのでしょうか。
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中国語の難易度は?
ところでEがそこそこ話せる外国語は英語と中国語です。
5年前にセブ島出身の妻と出会ってからは毎日英語で会話する日々で、全く中国語と触れ合っていません。
が、どうがんばっても英語の能力が中国語の能力を超えることができません。
理由は明らかです。
中国語の方が日本人にとって圧倒的に学びやすい言語だからです。
過去記事からの引用ですが、英語と中国語の特徴をまとめた表です。
英語 English 英文 | 中国語 Chinese 中文 | |
発音 | 困難(多くの日本人がカタカナ英語から抜けられない) | 台湾、中国南部の発音なら比較的簡単。四声の区別はやや困難 |
文法 | 動詞の活用、単数・複数、冠詞、前置詞など複雑 | 時制なし、活用なし、文学的表現以外は単純 |
単語 | ローマ字の組み合わせは日本人にとって無機質で習得困難 | 漢字の組み合わせは日本人にとってなじみやすく覚えやすい |
聴解 | ネイティブ発音の聴き取りは困難 | 台湾、中国の南方の発音は聴き取りやすい |
具体例があった方がいいと思うので、Eの【負けない(?)中国語講座】を開講します。
Eの負けない中国語講座
表に挙げた「英語より中国語の方が学びやすい」文例を紹介します。
音声については文字だけのブログなので省略で…
中国語は時制なし、活用なしの単純文法
英語の面倒なところは何といっても活用や変化の多い文法ですよね。
その中でも時制、動詞の活用は会話をしているとき常に悩まされます。
例えば、次の英文
I am a Japanese teacher.
私は日本語教師です
ごく単純な文章ですが、これを作文するときにはいくつか気にかけなければならないことがありますよね。
・時制(現在→ am)
・be動詞( " I " だから → am )
・単数 or 複数
(単数だから→冠詞の "a" を使って " a teacher " )
と、これだけの文法項目を気にかけながら会話をしなければなりません。
もちろん、この単独の一文だけを言うならたいして難しくはありません。
が、どっぷりと会話に没頭している最中に全ての文法を正確に発声することは至難の業、いや不可能です(少なくともEは)。
" I am a teacher. " 自体は単純ですが、文法上のバリエーションの多さには気が遠くなりそうなものがあります。
be動詞は、過去なら [was ]、過去分詞なら [ have been ] に、未来なら [ will be ] や [be going to be]に変化
【例】
I was a Japanese teacher last year. 【過去】
私は去年日本語教師でした
I have been a Japanese teacher since 2020 【過去分詞】
私は2020年から日本語教師をしています
I am going to be a Japanese teacher next year. 【未来】
私は来年日本語教師になります
・ " I " " You " " He " など主語によって対応するbe動詞が
" am " " are " " is " に変化
【例】
You are a Japanese teacher.
あなたは日本語教師です
He is a Japanese teacher.
彼は日本語教師です
・主語が " We " や " They " なら「a teacher → teachers」と冠詞はなし&複数に変化
【例】
They are Japanese teachers.
彼らは日本語教師です
もう、be動詞の変化の多さだけで気が遠くなってきましたよね。
学生時代、この勉強だけでどれだけの時間をかけたことか。
にもかかわらず、大人になってから英会話を始めた人にとって、これらを常に無意識で正確に使い分けられる人は稀のはずです。
では、同じ文章が中国語ではどうなるでしょう。
我 是 日文 老師
私は日本語教師です
※中国語の文字には中国の簡体字と台湾や香港の繁体字がありますが、当記事内では中国語未学習者でもわかりやすい繁体字で表記します。
さて、日本人ならこの中国語の文章、「我是日文老師」を発音も文法も全く分からなくても意味が推測できるかと思います。
それこそが漢字の力です。
漢字が多くのヒントを日本人に与えてくれます。
みなさんの推測の通り、この文章の中の「是」は英語の[be動詞]に当たるわけです。
さて、この「是」ですが、be動詞のように時制や単数・複数による変化があるのでしょうか?
答えは、ありません。
全ての主語、時制に「是」ひとつで済みます。
你 是 日文 老師
あなたは日本語教師です
我們 是 日文 老師
私たちは日本語教師です
陳先生 是 日文 老師
陳さんは日本語教師です
どの主語も全部「是」です。
ついでに上に挙げた例文で、単数でも複数でも「老師」が変化しないこともわかります。
では、時制によって活用や変化はあるのでしょうか。
我 去年 是 49歳
私は去年49歳でした
我 現在 是 50歳
私は今50歳です
我 明年 是 51歳
私は来年51歳です
やはり全て「是」で通用します。
それが「いつ」なのかは「去年」「現在」「明年」など時間を表す言葉で直接表します。
さあ、これで英語のbe動詞に当たる表現が、中国語では極めて簡単に使えることがわかりました。
あの英語のbe動詞の勉強にかけた時間はなんだったんでしょうか?
疑問文も簡単に作れます
英語って疑問文を作る時も面倒ですよね。
例えば、
Are you a teacher ?
あなたは教師ですか?
まあ、この単純な一文だけなら主語とbe動詞を入れ替えるだけですからそれほど難しくはありません。
Do you come to school ?
あなたは学校に来ますか?
Does he come to school?
彼は学校に来ますか?
Did you come to school?
あなたは学校に来ましたか?
動詞を使った疑問文は、肯定文にはなかった " Do " や " Does " や " Did " などを時制や単数・複数の区別に合わせて文頭に引っ張り出すという作業が必要です。
では、中国語はというと、
你 是 老師 嗎?
あなたは教師ですか?
「你 是 老師(あなたは教師です)」という肯定文に「嗎?」をつけるだけで他の語順は一切変えずに疑問文が作れます。
日本語の「か?」と同じ使い方だから日本人にはなおさら馴染みやすいですよね。
動詞を使う場合も同じです。
你 來 學校 嗎?
あなたは学校に来ますか?
これも「你 來 學校(あなたは学校に来ます)」に「嗎?」をつけるだけ。
時制の変化もなし。
では、疑問詞がある場合は?
これも英語だと面倒ですよね~
Where do you study Japanese?
どこで日本語を勉強しますか?
I study Japanese at school.
学校で日本語を勉強します。
Who is your teacher?
あなたの教師は誰ですか?
My teacher is Mr. Chen.
私の教師は陳先生です。
このように疑問詞は必ず文頭に持ってこなければなりません。
中国語はというと。
※どこ=「哪裡」
你 在 哪裡 學 日文?
どこで日本語を勉強しますか?
我 在 學校 學 日文。
学校で日本語を勉強します。
誰 是 你的 老師?
誰があなたの教師ですか?
陳老師 是 我的 老師。
陳先生が私の教師です。
というように肯定文と同じ位置に疑問文を当てはめるだけです。
ちなみに上記の二つ目の疑問文は主語を入れ替えることができます。
你的 老師 是 誰?
あなたの教師は誰ですか?
我的 老師 是 陳老師。
私の教師は陳先生です。
でも英語では、こんな風に疑問詞の語順を入れ替えることはできませんよね。もちろん意味は通じはしますが。
✘ Your teacher is who?
あなたの先生は誰ですか?
このように基礎中の基礎の文法からして、中国語は英語よりはるかにに覚えやすいことがわかります。
しかも、日本人は他の国の中国語学習者にはない「最強の武器」を持っています。
そう、
日本人は中国語ネイティブ以外で唯一の漢字の知識がある国民です。
ということはつまり、日本人は世界一中国語を学ぶに適した国民だったのです。
日本人が子供の頃からさんざん漢字の勉強に費やした時間が、中国語を学ぶことでダブルに役に立つわけです。
中国語学習は、学習を進めていけばいくほど面白くなっていくはずです。
ただひとつ、発音を除いては。
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はじめのうちは地道な発音練習が必要です。
発音は唯一にして最大のハードル
中国語の発音は、英語と同じようにかなり難しいです。
え、英語と同じくらい?それならなんとかなるかも、
と思うかもしれません。
ただ、ネイティブへの伝わり度でいうと、中国語はかなり正確に発音しないと理解してもらえません。
中国語の発音の難しさは2点あります。
①日本語にない発声
②四つの声調(四声)
①の「日本語にない発声」は英語も中国語も、たくさんあります。
例えば、英語では多くの日本人が " R " と " L " の発音の区別ができない、または違いすらわからないということは周知の事実です。
でも、英語はそこまで正確な発音でなくても理解してもらえるケースが多いです。
例えば " right " と " light " をどちらも同じカナカナ発音で「ライト」と発声したとしても、ほとんどの場合は文脈で意味を理解してもらえます(相手が日本人のカタカナ発音に慣れていることが前提ですが)。
が、中国語はほとんどの場合、特に②の四声が間違っていると全く伝わりません。
中国語の発音で、日本人にとって特に難しいのが巻き舌発音です。
例えば、「日本」の「日」や「中国」の「中」は巻き舌発音で、これを日本語の文字で表すことは不可能です。
中国語の「ローマピンイン」という発音記号では「日」は[ ri ]、「中」は[ zhong ]と書きますが、これはあくまでも発音「記号」であり、この発音はこの「記号」で表す、と誰かが決めただけのものなので、英語やローマ字の感覚で読んでもトンチンカンな発音にしかなりません。
これは、例えば「らりるれろ」を「ra ri ru re ro」と表記する日本語の発音記号と同様、多くの外国語学習者を誤解させている、ローマ字を使った発音記号の功罪だとEは思っています。
この日本語の音声のどの音とも似ていない、中国語の巻き舌発音を習得するにはかなりの訓練が必要です。
さらに外国人の中国語発音を通じにくくしているのが四つの声調、四声です。
全ての中国語の漢字には四声があり(軽声というバリエーションもありますが)ネイティブはそれらを正確に把握しています。
初学者には、発声も聴き取りも区別するのが困難ですが、少し間違えただけでも全く通じないことがほとんどです。
四声は発音記号では「ā á ǎ à」というようにローマピンインの上につけ加える形で表します。
単独の漢字の発音だけならそこまで難しくはありません。発音をひととおり訓練してそれに各漢字の四声を組み合わせれば、1~2か月もあればそこそこ通じる発音が身につくでしょう。
はい、単独の漢字だけでも1~2か月はかかります。
四声の難しさの理由は、漢字と漢字を組合わせて単語にしたり、単語と単語を組み合わせて文章にしたときの音声の組合せにあります。
それぞれにバリエーションがあるからです。
そして四声のつなぎ方も正しくないと単語として全く通じなくなります。
ここが英語と違う、中国語発音の厳しさです。
Eは文章として発音して、そこそこネイティブ台湾人に通じるようになるまで半年ほどかかりました。
が、この発音問題さえ乗り越えることさえできれば、日本人ならかなりのレベルまで上達することができるはずです。
Eは早いうちから中国語の小説などの読書も始めました。
バイク免許も台湾移住の半年後に通訳なしで試験を受け、標識問題を1問間違えただけで文章問題は全問正解しました。
別にEが特別な語学習得能力があったわけでは全くありません。
音声なし、文章だけの中国語なら理解するのが簡単だからです。
だって、漢字ですから。
わからない単語も、電子辞書で一度意味を確認すればたいてい覚えられます。
英語だとなかなかそうはいきませんよね。
ということは、同じ学習時間をかけた場合、英語よりも中国語の方がより高い成果を得られるわけです。
そう考えると、英語学習だけに膨大な時間を費やすのってもったいなくありませんか?
なにかしら外国語を習得したい、という人にEは必ず中国語をススメます。
もちろん、
英語も中国語も両方できるのが一番いいんですけど。
まとめ
セブに住む三歳の娘を持つEはよく、娘の世代の日本の将来について考えます。
これからの50年こんなことが起こり得ますよね。
・超高齢化社会
・大災害の頻発
(南海トラフ、首都直下型地震、富士山噴火、地球温暖化で夏は40℃超の猛暑に巨大台風)
・人口減少と大災害で経済の衰退
・超大国化した中国への経済依存
この先、日本以外の国でも生きていける能力を身に着けることが必須の時代がやってくるでしょう。
すると、まず必要になるのが外国語です。
そもそも英語は小学校から学校で学ぶし、高校大学と受験勉強でも勉強するから誰でもある程度の基礎ができています。
だから大人になってから英会話の勉強を始めてもそこそこできるようになれます。
それにプラスして中国語ができることは、大きな武器になります。
まずもって中国語を話せるネイティブ日本人って稀です。中国語を自ら本気で学習する人すら稀です。
Eはそもそも地元で中国語を本格的に勉強したことのある人自体、出会ったことがありません。
Eより上手い中国語を話す日本人となると、もしかしたら同じ市内ということなら10人を切るかもしれません。
気付いていない人もいるかもしれませんが、これまでの10年とこの先の10年とでは、中国の世界での地位は天と地ほども違います。
ほんのここ2,3年で中国は激動しています。
深圳などは世界でも最先端のテクノロジー都市ですし、ひと昔前まで日本人が散々笑いものにしていた中国人のマナーもかなり改善されていると聞きます。
これからビジネスシーンでの中国語の重要度は確実に伸びていくはずです。
漢字を学ぶのに莫大な労力を費やさなければならない他の国の人々に比べて、中国語学習に圧倒的な優位性を誇る日本人がこの先、中国語を学ばずに何を学ぶんでしょうか。
今後もEの中国語学習体験やおすすめ勉強法などについて語っていきます。
次回をお楽しみに!
中国語の発音練習にはネイティブのコーチが必須です。