2024年6月下旬に業績不振で経費削減が急務となった派遣先工場から派遣契約の打ち切りを宣言され、7月末をもって派遣契約終了となった派遣社員E。
人生初の派遣切りに遭いました。
最終月の7月、Eが何をやっていたかというと、後任者への引継ぎです。
Eの後任となったのは派遣先直接雇用の契約社員。
果たしてEは無事に引継ぎを済ませて派遣先を去ったのでしょうか?
今回は3回シリーズの中編です。
是会の記事です。
引継ぎ最初のつまづき
Eがそれまでやっていた業務をそっくりそのまま引き継がせるつもりの派遣先。
とはいえEがやっていた業務は月次の定例のものだけでさえ膨大。
後任者は製造現場のラインで働いていた契約社員のタカヤマさん。
自信がなさげで、月次のルーティーン業務のひとつを解説しただけでビビッている。
とはいえタカヤマさん、Eの説明内容は一応理解できている。
というところまでが前回記事で述べた内容です。
EがOJTとしてまずタカヤマさんに教えたのが、作業量が多く、月次の、Eが暇つぶしの単純作業的な位置づけにしている作業でした。
この作業(仮に作業Aとします)はEの月の総作業量の4分の1ほどを占めています。
作業Aができれば類似の作業B、C、Dも比較的簡単にこなせるはずです。
ちなみに新人の頃は作業Aが総作業量の2分の1以上を占めていましたが、仕組みを理解して作業に慣れれば、当然作業スピードは上がりますし、Eのように様々な効率化をすることで作業時間は半減できます。
この効率化は類似の作業にも活用できるため、Eは派遣社員として派遣された最初の派遣契約の作業内容を半分以下の時間でこなせるようになり、空いた時間で意図的に他の社員の作業を覚えて自分のルーティーン化することで時給アップを実現してきたわけです。
ということは、タカヤマさんがEの業務をそっくりそのままできるようになるためには、すぐにではないにしても各作業を標準時間よりかなり短い時間でこなせるようになる必要があるわけです。
では実際のタカヤマさんのパフォーマンスはどうだったのでしょうか。
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タカヤマさん始動!
さて、作業にあたっての概要説明、必要な社内システムの操作方法の説明、Eが使っていた社内システムを補完するためのExcelのフォーマットなどの説明をした後、満を持して製造現場にてOJTです。
Eが人に物を教える時のメソッドは伝統的な山本五十六の名言のアレンジで、
「言って聞かせてやって見せ、させて見せて褒めてやる」
です。
山本五十六氏とは少し順番が違っています。
つまり、まずは説明して、Eが自分でやって見せます。
次に、やってもらって褒めてやる、のが理想ですが、相手がやってみてできなければ修正指導します。
A作業についてはすでに時間をかけて十分説明を尽くしてあります。
タカヤマさんは懸命に自分で用意した小さめのメモ帳になにやらメモを取っていました。
さて現場でEがやって見せます。
その際に、ある計測器を使い、そこに数値が表示されます。
と、この時点でタカヤマさんにはやや学力がないことが判明します。
Eの見込み違い
まず、計測器の端子を対象物にセットして計測ボタンを押します。
計測器には3桁の数字と乗数が表示され、3桁の数字に乗数に応じた位置に小数点を付ければ計測値が求められます。
例えば[1.23]という3桁の数字と[6]という乗数が表示されれば計測値はそのまま[1.23]です。
乗数が[5]だとすれば計測値は[0.123]、乗数が[7]なら[12.3]となります。
こういう表示方法を使っている機器ってたまにありますよね。
タカヤマさんの場合、これがなかなか理解できないよう。
Eが「とりあえず機械的に、この乗数なら小数点はここ、と覚えておくだけでいいです」とアドバイスします。
実際Eも乗数ゼロの素の数値の小数点がどこかなんて意識したことはありません。乗数6を基本に小数点を移動させて社内システムに入力するだけで充分事足ります。
が、タカヤマさん、一回目に自分で出した数値を見て悩み始めます。
とりあえず自力で計測値を入力できそうにないので、先にEが例示したような「乗数がこれなら小数点はここ」という表を書きだし、タカヤマさんは例の小さなメモ帳に書き写します。
そう。
前回記事で述べましたが、EはタカヤマさんにこのA作業を説明した時点では「タカヤマさんのポテンシャルなら、少なくともEが月次でやっていた業務すべてを1か月で完了できるようになれる可能性がなくもない」と見当をつけたのでた。
が、一発目の「やらせてみる」の時点でそれが間違いだったことが判明しました。
すでに述べたように、Eがやっていた膨大な業務を1か月では無理にしても、短期間で、最低でも月次の(月内に終わらせることが必須の)業務だけでもこなせるようになるには、かなりの高いポテンシャルが必要。
それが、引継ぎ初日からつまづきます。
同じ作業をこれまで、すでにEと同様に派遣切りで辞めた同僚派遣社員のオカダくんにも、半年前に他企業の正社員に採用されて辞めていった派遣社員ミタ君にも教えたことがありましたが、特に問題なかったんで、まさかここでという感はありましたが、学力は人それぞれ。
小数点の位置を移動するのに、なぜそんなに悩むのか?
とはいえ、Eの業務で「学力」が必要とされる場面はそうはない、はず。
現在行っている作業AはE的には単純作業といえるものの、次にボリュームの多い作業Bは同種のものとはいえ、基本的に個別対応が必須
この作業Bに関しては個々にすべてを説明することは始めから無理。
例えEが辞めずに時間をかけて引き継いだとしてもすべてを網羅するには数か月はかかります。
それをEは新人時代にどうこなしていったかというと、ある程度の作業項目は明示されているから、まずはそれを閲覧。
モノによってはそれを読んでもさっぱりわからないものもあって誰かに聞くしかありません。
社内の多くの人が、時にはすでに退職した人も、それらに関わっていて、資料の作成者の名前や印鑑などを手がかり、新人派遣社員Eがまるで探偵Eのように聞き込み捜査をして情報をかき集める、という形でこなしてきました。
つまり、作業手順書に書いてあるそのままを行うだけの製造ライン作業者とは職種からして違うといってもいいわけです。
が、そこそこの社会経験のある人間なら、例えば何かのプロジェクトをやるのに、社内社外問わずにイチから必要な情報をかき集めて組み上げていく、などの作業は経験しているはず。
というか、そういったそこそこ普通の人間力さえあれば、Eのように入社して半月以内に、前任者のうち一人は退職し(もともと退職予定だった)、もう一人は心に不調をきたして長期欠勤に入る、というまともに引継ぎしてさえもらえない環境下でもバリバリと、半年もしないうちに50円の時給アップを可能にするほど、業務をこなしていけたわけです。
Eが前派遣先で最初の時給アップを実現した時の過去記事です。
タカヤマさんの健闘
さて、タカヤマさんのそういった意味での人間力はどうだったんでしょうか?
引継ぎは、最も「人間力」が必要とされる作業Bへと移ます。
業務Bはこんな特徴があります。
①工場内で使われている製造用具の点検、メンテナンス的作業
②すでに説明を終えた作業Aと同系統の業務。
③当該「製造用具」の範囲が広く、点検、メンテナンス方法は千差万別
④一応作業内容が社内システムに登録されてるが、作成者によっては実施に足りるだけの情報がない場合も多数
⑤実施周期が数か月以上と長い
そう、手取り足取り教えてくれる引継ぎ者がいない場合、自力で情報収集をしなければなりません。
また、実施周期も長いので、自分で作業手順書を作るなどの対策をしないと、複雑なものは次回実施する時にはやり方を確実に忘れます。
が、数分で終わる単純なものが大半ではあります。
なので作業Bについては上司とも相談して、こう引き継ぐことにしました。
①現在、E以外にやり方を知らない作業は7月末の退職までに優先して引き継ぐ
②とはいえEの記憶だよりなので、全部で数百ある中に引継ぎ漏れはあるはず
③Eの退職後に作業手順がわからないという場合の対処法も教えておく
④そもそも7月実施予定のものは当然、実際の作業しながら引き継ぐ
①の「E以外にやり方を知らない作業」のチョイスですが、Eの記憶だよりとはいえ、ある程度ピックアップは可能。
なぜなら、そういった作業はEが自分用の作業手順書を、場合によっては会社のデジカメで自ら撮った写真付きで、残してあるからです。
中にはExcelにして数ページにも及び、実施の度にその自ら作った作業手順書を見ながら実施しなければできないような複雑な作業もあります。
社内の公式な作業手順書として登録してあるものでは、到底作業実施に足りるだけの情報がないからです。
もちろん、自身の資料を作るにも、それに関わる人を探し出してやり方を聞き出して実施し、事細かにメモを取った上で作成したわけです。
とはいえ、十中八九漏れはあるはずで、Eがいなくなった8月以降タカヤマさんが「あ、これわからない」となる場面はあるはず。
そこはどうしても、タカヤマさん自身の人間力で対処してもらうしかありません。
Eが最低限やってあげられることとして、資料のどこを見れば「わかる人」を探し出せるのか、
Eの実際の経験談、などを伝える、といったことしかできませんでした。
さて、作業Bの引継ぎ開始。
Eが見たタカヤマさんの人間力は?
まとめ
はい、もう想像がついているかと思いますが、引継ぎ作業はこのあと難航します。
原因としては、タカヤマさんのそもそもの能力値の他に、何かを学んだり覚えたりする際の方法論に問題があるのでは、ということが見えてきます。
過去に当ブログの記事内で語ったことがありますが、Eは仕事を覚えるということに関しては「数をこなす」ということを基本に考えています。
複雑な作業であっても、最初はミスを(多数)犯すものの、慣れによって標準以上のスキルを得ることができるはずです。
要するに、初めから完璧にできるわけがない、です。
そんなの求めるな、です。
さて、いよいよ引継ぎ作業も佳境に入ってきます。
次回をお楽しみに!
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